県内で今年、クマによる人身被害が8月末現在で4件に上り、記録が残る1977(昭和52)年以降の同期比で過去最多となっていることが28日、県への取材で分かった。秋はクマの行動が活発化しやすく、餌となるブナの結実は調査全地点で「凶作」の予想で、今月に入って里山や果樹園地などでの目撃情報が相次いでいる。キノコ採りや行楽で入山機会も増えることから、県は警戒を強め、注意喚起している。
県みどり自然課によると、今年の人身被害は山林で3件、自宅敷地で1件発生した。5月に小国町で山菜採り中の男性が、7月に同町でランニング中の男性がそれぞれ襲われた。8月には真室川町でキノコ採りの男性が被害に遭った。いずれも山林に1人で入り、このうち2人はクマよけの鈴を携帯していなかった。
山林以外では、8月に白鷹町の男性が自宅玄関先で襲われた。近くの木にクマの爪痕があり、隣接する畑に電気柵を設置していたが一時期、漏電で電圧が下がっていたという。敷地内には廃棄野菜もあった。
県環境科学研究センターによると、県内で今秋のブナの結実は調査14地点の全てで「凶作」を見込む。凶作の年は目撃件数が増える傾向にある。秋は、冬眠に備えてクマが活発に行動する時期で、同課は「市街地で出没が増える恐れがある」とみている。
年間のクマによる人身被害件数は、2010年の11件が過去最多で、この年は10月の1カ月間だけで7件発生した。同課は、山林に入る際は複数人で行動し、鈴やラジオなど音が出るものの携行が大事だと指摘する。併せて「生ごみを出しっぱなしにしておくと、クマをおびき寄せる要因になる。芋煮会の後片付けも徹底してほしい」と話す。
一方、今年の県内目撃件数は今月24日現在、505件で、前年同期比150件増となっている。今年と同じくブナが凶作だった20年は、10月の1カ月間だけで月間目撃件数として最多の261件だった。
県は28日、県庁で、関係各課でつくる総合クマ対策推進チーム会議を開き、今年の目撃状況などを共有し、入山時の複数での行動や果樹の早めの収穫といった被害防止対策を呼びかけていくことを確認した。
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