新型コロナウイルス禍の制限が緩和され、海外旅行客は増えつつある。ただ日本から最も近い国の一つ・韓国への旅行者はまだコロナ禍前の水準に戻っていない。韓国へは直行便も多く、美容やファッションなど旅行先としての魅力は多い。国際情勢の悪化や北朝鮮のミサイル発射などで緊張が高まる一方、日韓関係は改善し、交流をさらに深化させようと機運は高まっている。12~15日に駐仙台韓国総領事館主催の韓国訪問事業に参加し、現地の様子を探った。
首都ソウル中心部にあるガラス張りのビルの1階。大画面にはカラフルなアニメーションが映し出され、通りを歩く人の目を引いていた。この「ハイカグラウンド」は、K―POPなど韓国を代表するポップカルチャーや観光の情報発信拠点だ。さまざまなコンセプトの舞台装置もあり、訪れた人はミュージックビデオさながらの場面を撮影することができる。
コロナ禍の昨年にリニューアルオープンしたばかりで、韓国観光公社が運営する。日本語や英語などでの案内もある。同公社によると、今年1~7月までに訪韓した日本人は約107万3500人。回復基調にあるものの、コロナ禍の前の同時期と比べ6割ほど。円安ウォン高で訪韓のハードルは高くなっている一方、政権交代により、一時期は「最悪」とされていた日韓関係も一気に改善。現地での友好ムードも高まっている。
訪韓初日の午後9時過ぎ、ソウル中心部にある広蔵(クアンジャン)市場を訪ねると、観光客や地元の人でにぎわっていた。屋台には、チヂミなど韓国料理が所狭しと並んでいる。スパイシーな香りに、甘い匂い。思わず目移りしてしまう。
日本人の若い女性と多くすれ違った。鹿児島県から訪れた大学生今林彩夏さん(21)は、化粧品や洋服のショッピングのため、3泊4日の日程で滞在。「韓国には初めて来た。日本語もある程度通じるし、思っていたよりも現地の人が優しい。市場は異国って感じがいい」
市中心部を流れる清渓川(チョンゲチョン)も観光スポットの一つ。長さ約10キロの人工河川で、市民の憩いの場所でもある。噴水は青色に照らされ、橋はライトアップされる。交流サイト(SNS)の「映え」スポットだ。肩を寄せ合うカップルや写真を撮影し合う観光客、仕事帰りの人。みな座って談笑していた。ガイドによると、近くにはおしゃれなカフェもあるという。
ソウルの夜はあまり湿度を感じず、涼しかった。川辺を歩くと吹き抜ける風が心地よい。高層ビルが立ち並ぶ大都市に圧倒されていたが、ここは文字通りオアシスだった。
雑踏事故あった梨泰院、若者に人気の店並ぶ
韓流ドラマの撮影地となった梨泰院(イテウオン)や統合型リゾート施設(IR)を備えた「パラダイスシティ」にあるホテルも訪れた。
梨泰院はハロウィーンで雑踏事故が起きた歓楽街という印象があるが、多国籍の外国人が住む観光特区だ。看板は英語が多い。追悼のメッセージが貼られた事故現場の通りを過ぎ、裏通りに入ると、若者に人気のクラブや飲食店が並ぶ。ドラマの撮影地を示す看板もあった。
韓国ではIR施設の整備が進む。パラダイスシティは仁川国際空港近くで、外国人専用カジノもある。ホテルには芸術家草間弥生さんの作品が飾られ、正体不明の芸術家バンクシーの作品展も開かれていた。宿泊客の約7割が外国人で、うち6割は日本人だという。
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