誰もが生きる価値ある 渡辺えりさんが講演・やましんレディースセミナー

2023/6/8 21:31

 各界の第一線で活躍する女性を講師に迎える「やましんレディースセミナー」(主催・山形新聞、山形放送)の2023年度第1回例会が8日、山形市の県総合文化芸術館(やまぎん県民ホール)で開かれた。俳優・劇作家の渡辺えりさん(山形市出身)が「いつまでも生き生きと~女性は素晴らしい力を持っている」と題して講演し、健康的に生きるこつや平和の大切さを訴えた。主催者を代表し寒河江浩二山形新聞社長・主筆(山形新聞グループ経営会議議長)が「11月まで、さまざまな分野で輝く女性が講師を務める。楽しいひとときを過ごしてほしい」とあいさつし、講師を紹介した。以下は講演要旨。

講演する渡辺えりさん=山形市・やまぎん県民ホール

 現在、東京・三越劇場で喜劇「三婆(さんばば)」の公演中だ。昭和30年代に、ある社長の急死で本妻と愛人、社長の妹の奇妙な3人暮らしが始まるという作品。女性は手に職を持てず、男性のお金で暮らすしかなかった時代があった。今も違和感なく感動したり、泣いたりしているお客さんがいる。いかに日本はまだ男性社会かということを実感している。女性が仕事をするのは今も昔も大変。女性が活躍すると女性が足を引っ張る風潮もある。ここで断ち切らなければいけない。世の中を変えるため、勇気を持って行動しましょう。

 「三婆」で84歳の水谷八重子さん、78歳の波乃久里子さんと共演している。コロナ禍で舞台に立てなかった時期が長く、体力的に大変そうだと思ったが、稽古を重ねるうちに若々しくなっていった。本番の演技はさすがプロだと思った。脳と体は直結している。使わないと衰えていくことが分かった。人は駄目と思えば駄目になるし、頑張ろうと思えば頑張れることを学んだ。疲れていても働く、動くことは大切だ。

 70歳になる2年後、山形で演劇塾を開きたい。山形で芝居を作り、全国に発信する夢を描いている。1年くらいかけて仕上げ、県民ホールで発表するなど何か面白いことを山形でやりたい。

渡辺えりさんの経験に聞き入った会員=山形市・やまぎん県民ホール

 15年ほど前に両親と原爆資料館に行ったが、戦争を経験した2人は「気の毒で見ていられない」とすぐに出てきて泣いていた。戦争を繰り返してはいけないと気持ちをあらたにした。足を棒にして取材し、実話を基に戯曲を書いてきた。今もウクライナやパレスチナ、ミャンマーなどで戦争や紛争が起きている。守り育てるという特性を持つ女性がリーダーとなり、戦争はいけないと伝えていかなければならない。

 人の役に立たなくなったら自分は終わりだなんて思わないでほしい。母は現在、認知症を患い施設に入っている。人のお世話になり、料理も洋服も作れない、話もできないけど、かあちゃんの笑顔を見るだけでうれしい。いてくれるだけでいい。誰もが生きているだけで役に立っている。誰もが生きる価値があることを忘れないでほしい。私も命ある限り、喜びや笑顔を届けられるよう頑張っていきたい。

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