春山登山や山菜採りのシーズンを迎え、暑さに体が慣れていないこの時期に懸念されるのが熱中症だ。体が気温の変動に順応しにくく、発汗しづらいため、発症する傾向にある。トイレに行くことをためらって水分を取らず、発症リスクが高まる恐れもある。例年、ゴールデンウイーク(GW)期間は入山者が増え、医師は水分の摂取などを徹底するよう呼びかけている。
山形地方気象台によると、3~5日の3日間、最高気温25度以上の夏日も県内で予想されている。GW終盤の6、7両日は低気圧の影響もあり、3日間と比べて10度近く気温が下がる所もありそうだ。
かわごえ内科クリニック(山形市)の川越圭院長(46)は「春はまだ冬の感覚が体に残り、発汗や熱を逃しにくい状態にある。湿度が上がると体感温度が上昇し、気温以上に暑く感じる」と熱中症リスクを指摘する。特にシニア層はトイレを我慢して水分を取らず、熱中症を招くケースがあるという。
県消防救急課によると、県内で2022年(毎年おおむね5~9月の統計)の熱中症の救急搬送人数は屋内外を問わず、5月38人、6月94人、7月239人、8月139人、9月42人、10月1人。5月の搬送件数は決して多くないが、同課は「高齢者は気温が低くても、屋外に長時間いるだけで熱中症になる事例はある」と警鐘を鳴らす。
山中で吐き気やしびれ、めまいなど熱中症が疑われる症状が出た場合、どう対処すればいいのか。川越院長は▽直射日光を避け、日陰に移動▽通気性に優れた服に着替える▽保冷剤や氷などで太い血管がある首や脇、足の付け根を冷やす―ことをポイントに挙げる。
川越院長は熱中症に備え、塩分を含むタブレット、経口補水液やスポーツドリンクなどの常備を勧める。普段から取り組める予防策として、軽い運動などを推奨する。発汗して熱を放出しやすい体に慣らすことでスムーズな放熱が可能となり、熱中症の予防につながるとしている。
山中は寒暖差が激しく、発汗で体が急に冷える状況も想定される。県警地域課は「雨露にぬれたり、日が陰ったりして体が冷え込むケースもある。入山の際は水分と軽食、防寒具を忘れずに携行してほしい」とし、「万が一に備え、携帯電話を持参し、衛星利用測位システム(GPS)機能を有効にしてもらいたい」と訴える。
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