県内各地の公立図書館が、長期間返却されない「延滞」に悩まされている。住所や電話番号が変わり、連絡がつかない事例や、1年以上返ってこない本が4000冊に上る図書館もある。返却期限の失念が多いとされるが、「なくした」「他の人に貸した」という利用者もいるという。モラルやマナーの低下で、貴重な書籍が失われることが懸念されている。
「10年以上延滞し続けている人もいる」と南陽市社会教育課の岩瀬優子課長補佐は、同市立図書館の状況を説明した。地元の郷土史家が書いた非売品の本も延滞され、天童市立図書館でも、絶版となった将棋に関する資料など、入手が困難な書籍が返ってこないことがあった。再度購入した直後に返却されたこともあり、同図書館の武田真理主任司書は「別の本が買えたのに…」と語る。山形市立図書館の斎藤久美副館長によると、1年以上戻らない本が4千冊以上もあり、何冊も延滞している人もいるという。
各図書館は延滞利用者に連絡し、封書やはがきでも督促をする。1カ月に130人に電話したり、督促状が40~50通に及んだりする図書館もある。ただ、電話番号や住所が変わり、連絡がつかないケースも多い。返却期限の失念や、借りたこと自体を忘れていることが理由として多いが、中には紛失や又貸しで、手元からなくなっている場合もある。利用者カードに有効期限を設け、直近の連絡先を把握し、悪質な延滞利用者への貸し出し停止など、図書館側も対策を講じている。
日本図書館協会(東京)の担当者は「一度にたくさん借り、読み終わらないケースや、無料で罰則もなく、返却する意識が薄れるからではないか」と要因を分析。法的な手段も取れるが費用対効果は限定的で、返却ポストを図書館以外にも置くなど、返しやすい環境の整備も必要だと指摘する。関係者の多くは、なによりも、図書館を利用するモラルとマナーの問題だと訴えている。
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