広く庶民の味として親しまれているサバの缶詰が、記録的なサバの不漁の影響で全国的に品薄になり「サバ缶ショック」が広がっている。海水温の上昇などが原因とみられるが、メーカーではサバが足りず値上げや販売休止の動きも出ている。本県の郷土食「ひっぱりうどん」には欠かせない食材で、食卓にも影響が及びつつある。
漁業情報サービスセンター(JAFIC、東京)によると、全国主要港のサバ類の累計水揚げ量は、2022年1~11月が20.3万トンにとどまり、前年同期比で約10万トン減少した。18年以降で最も少なかった。22年12月の主要産地の卸売平均価格は1キロ165円と前年同期比約14%上がり、前月比では約41%高くなった。
不漁の要因の一つに考えられるのが海面温度の上昇だ。JAFICによると、漁獲量の多くを占める太平洋側の漁港周辺の水温が上がり、サバが海の深部へ移動した結果、捕れなくなった可能性があるという。生息エリアが重なるマイワシの増加でサバが近づけず、漁場から離れた可能性も指摘する。
水産食品会社の極洋(東京)は、サバの缶詰商品30品目のうち28品目の販売を今月初めの出荷分から休止した。不漁に加え魚体のサイズが小ぶりだといい、担当者は「小さいと脂の乗りも良くない。品質維持からもやむを得なかった」と説明した。マルハニチロ(同)も4月の納品分から、サバ缶の値段を約1~2割値上げすると発表した。
山形市内のスーパー・フードセンターたかき南原店では、サバ缶が置いてある棚の一角に「メーカー都合で入荷未定」と書かれた紙を貼っている。売れ筋商品のため普段は売り場の目立つ場所に置いているが、今は通常の缶詰コーナーに並ぶ。担当者は「特売のチラシにも載せられない」とこぼす。
サバ缶は本県の郷土食「ひっぱりうどん」に欠かせない存在だ。村山市の市民団体「ひっぱりうどん研究所」の佐藤政史所長(50)は、品薄や高騰の状況が長期化することを懸念している。手頃な値段で、気軽に食べられることが魅力であり、「(新型コロナ禍で止まっていた)イベントが来年度は多数予定されているのだが…」と不安を募らせた。
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