モンテ新戦力、8選手を紹介

2023/2/5 14:41

 サッカーJ2・モンテディオ山形はJ1昇格を目指し今季、新たに個性豊かな8選手を加えた。個々の魅力やプレースタイル、新天地での抱負を紹介する。

MF小野雅史

MF小野雅史

 左サイドバックで主力候補のMF小野雅史は、下部組織を含め12年間在籍したJ2大宮を離れ、山形に加わった。恩師が「ロマン」と強調した日本代表入りを目指し、成長を期し完全移籍を決断した。

 2019年のプロ入り後、20~21年はボランチやサイドハーフ、トップ下で中盤の核を担った。転機は唐突に訪れた。22年シーズンの始動前の面談で、当時の霜田正浩監督からサイドバックへのポジション変更を打診された。万能性やビルドアップ(組み立て)能力、走力が評価された。元日本代表のコーチ北嶋秀朗さんからは「ロマンでしかない。日本代表を目指せるところまでいける」と言われた。挑戦を決めた。

 新位置で経験を積んだシーズン終了後。他クラブから中盤の選手としてのオファーが届いた。一方で山形はサイドバックとして獲得に動いた。北嶋さんは山形行きを勧めてくれた。サイドバックは現代のサッカー界で注目されるポジション。選んだのは山形だった。今季は得点に絡む働きも自分に課すつもりだ。

 最近の趣味はサウナ。1次キャンプで滞在したホテルではFW高橋潤哉と一緒に汗をかきリフレッシュした。お薦めは8分を3セット。サウナの締めとして「外気浴が一番大事」と笑って話した。

 ◆おの・まさひと 埼玉県出身。小学5年でJ2大宮の下部組織に入り、大学は明大に進学。2019年に大宮に入団し、当初はボランチをはじめ中盤を担った。22年はサイドバックに転向し、リーグ戦出場は38試合1得点。身長172センチ、体重69キロ。利き足は左。背番号41。26歳。

MF田中渉

MF田中渉

 J2仙台から加入したMF田中渉は左利きの技巧派。新天地ではボランチ、トップ下で定位置争いに挑む。「攻撃面で自分のいいところを生かせる。一番成長できる」と選んだ山形でアピールする。

 元ブラジル代表の名選手ロナウジーニョの動画に夢中となり、1歳上の兄と一緒に競技を始めた。プロを目指し、桐生第一高(群馬)に進学した。だが、J1新潟のMF秋山裕紀らを擁した前橋育英高に、全国大会への道を断たれた。仙台の練習参加に「死に物狂い」で臨み、加入内定をつかみ取った。

 選手層が厚い仙台では出場機会を増やせなかった。2021年途中からJ2山口に期限付きで在籍し、懸命にレベルアップに励んだ。昨季は自陣から左足での思い切りのいいロングシュートが8月のJ2月間ベストゴールに選出されたほか、長短のスルーパスで攻撃のタクトを振るった。

 位置取りを重視する山形の戦術は、渡辺晋コーチが率いた仙台時代などで経験済み。「どこで出場しても、求められている以上のプレーを出したい」と意気込みは強い。

 古巣の仙台と、山形の意地がぶつかる「みちのくダービー」を楽しみにしている。「僕も燃えている。ゴールを決めて山形が勝てれば最高だ」と決戦を待ち望んだ。

 ◆たなか・わたる 群馬県出身。桐生第一高(群馬)から2019年に当時J1の仙台に加入した。21年途中にJ2山口に期限付き移籍。期間を延長した22年のリーグ戦出場は38試合5得点だった。兄はJ1札幌のMF田中宏武。身長170センチ、体重65キロ。利き足は左。背番号21。22歳。

MFイサカ・ゼイン

MFイサカ・ゼイン

 MFイサカ・ゼインは積極的な仕掛け、高精度のクロスを武器とする。昨季は横浜FCでJ1昇格に貢献。「スピードでは負けたくない。DFラインをぶっちぎっていきたい」と決意を口にした。

 ガーナ出身の父、日本人の母の間に生まれた。サッカーを始めたきっかけは、国内外が沸いた2002年のワールドカップ(W杯)日韓大会で、J1川崎のFW小林悠らを輩出した町田JFCで育った。名門の桐光学園高に進み、桐蔭横浜大時代は全日本大学選手権で準優勝した。

 プロ入りに伴い、ポジションをサイドバックに変更した。横浜FC在籍の昨季はウイングバックを務め、2得点6アシストをマークした。主戦場は常にサイドだ。「アグレッシブで面白いチーム」と以前から注目していた山形のオファーが届き、移籍を決断した。今季はサイドハーフに位置を戻し、ゴールに直結する動きで勝負する。

 「三笘の1ミリ」など、W杯カタール大会で注目を集めた三笘薫(ブライトン)は川崎入団時の同期。日本代表としての活躍に「少しずつでも追い付いていきたい」と刺激を受けた。初めて付ける背番号42は、影響を受けたという黒人選手初の大リーガーのジャッキー・ロビンソンと同じ番号だ。

 ◆イサカ・ゼイン 東京都出身。桐光学園高(神奈川)から桐蔭横浜大に進み、2020年にJ1川崎に加入した。中盤からサイドバックに位置を変えて経験を積んだ。22年に当時J2の横浜FCに期限付きで在籍し、リーグ戦出場は29試合2得点。身長174センチ、体重78キロ。利き足は右。背番号42。25歳。

DF西村慧祐

DF西村慧祐

 J2大宮から期限付き移籍で加わったDF西村慧祐は、プロ3年間で100試合近くの出場実績を持つ。一方で昨季終盤は前所属先のチームスタイルの変更に伴い、出場数が急減。悔しさを原動力に「自分の伸びしろや、まだまだやれるということを証明したい」と言い切った。

 「いろいろなことを経験し、プロ入りが現実味を帯びた」という大学4年間を経て、大宮に加入したのは2020年だ。開幕戦でメンバー入りを逃したが、新型コロナウイルス感染拡大によるリーグ戦の中断期間を前向きに考え、トレーニングに励んだという。プロのスピード感に慣れると、再開直後の第2節はスタメン入り。187センチの高さを生かした空中戦の強さ、前線への鋭い縦パスなど、実戦を通じて自信を得た。

 試合に出て成長したい―が今回の移籍理由だ。昨季まで山形守備陣をけん引したDF山崎浩介(J1鳥栖)との対戦経験を踏まえ、彼が示した安定感は自身に求められているものだと捉える。「自分らしさを出し、チームの核になっていければいい」と気合を入れる。

 昨年11月に婚姻届を出し、新シーズンを迎える。「優しくて明るい」という妻のためにも「一層の責任感を持って頑張りたい」と決意した。

 ◆にしむら・けいすけ 千葉県出身。習志野高(千葉)、専大を経て2020年にJ2大宮に加入した。1年目からセンターバックの主力を担い、J2通算94試合で5得点。山形には期限付き移籍で加わった。身長187センチ、体重81キロ。利き足は右。背番号4。24歳。

FW後藤優介

FW後藤優介

 若手が大半を占める新加入の中で、FW後藤優介は豊富な実績を持つ。かつてJ2、J3で3シーズン連続の2桁得点を記録した。近年はゴール数が伸びていないため「チームのために走り、得点を目指して頑張りたい」と復活を約束した。

 鹿児島県内の中学校からJ2大分の下部組織に加わり、2011年の高円宮杯U―18(18歳以下)プリンスリーグ九州で得点王に輝いた。翌年にトップチームに昇格し、日本フットボールリーグ(JFL)のHOYO大分(現・ヴェルスパ大分)への期限付き移籍などを経て、16年に初めて2桁の14得点をマークした。当時は九州の名門クラブがJ3だったシーズン。クラブを再びJ2に押し上げる得点力を示した。

 20年に当時J1の清水ではピーター・クラモフスキー監督の下でプレーした。「チームのゴールへの意識を高めてくれた指導者」との印象で、昨季で清水との契約が満了し、再び同じクラブを選んだ。トップ下の主力候補だ。

 実は人見知りだというが、同じ名字のGK後藤雅明が在籍していることから、キックオフイベントでは「GKの後藤が失点を減らし、FWの後藤が得点を増やしたい」とちゃめっ気たっぷりに自己紹介。会場の笑いを誘った。

 ◆ごとう・ゆうすけ 鹿児島県出身。高校進学時にJ2大分の下部組織に入り、2012年にトップチームに昇格した。8シーズン在籍し、20年に当時J1の清水へ。J1通算84試合で4得点、J2通算120試合で32得点。身長171センチ、体重70キロ。利き足は右。背番号49。29歳。

DF吉田泰授

DF吉田泰授

 ただ一人のルーキーは山梨学院大から入団したDF吉田泰授だ。昨季は特別指定選手としてリーグ戦デビューを果たした。「人の技術を盗みながら成長していきたい」と語り、開幕スタメンを現時点の目標に掲げる。

 郡山市出身で、中学時代は全国強豪の尚志高と連携するクラブ「ラッセル郡山」に所属した。同高に進学し、当時は左サイドハーフでメンバー入り。3年時には仲間と共に2018年度の全国高校選手権で準決勝に進出した。山形に在籍したFW山岸祐也(J1福岡)ら高校の先輩たちと4強入りで肩を並べた。

 大学入学に伴ってサイドバックに転向し「オーバーラップに楽しさ、やりがい」を感じたという。クロスの精度などを磨き、関東大学リーグ2部への初昇格に貢献した。23年の山形への加入が内定し、昨季はリーグ戦で注目を集めた岡山との「再開試合」に途中出場した。貴重な経験を得た一方で、連係ミスが失点に直結し、本人にとってほろ苦い結果に。「デビュー戦でのやらかしを挽回する」と前を向く。

 好きな言葉は「勇猛果敢」。高校時代の自身を取り上げた記事中で使われていた。「どんどん仕掛ける自分の特徴」にぴったりだと胸を張る。

 ◆よしだ・たいじゅ 福島県出身。地元の尚志高でプレーし、全国高校選手権で4強入りを果たした。山梨学院大に進学し、2022年7月に山形への加入が内定した。昨季は特別指定選手としてリーグ戦1試合に出場した。身長174センチ、体重67キロ。利き足は左。背番号22。22歳。

DF熊本雄太

DF熊本雄太

 「(完全移籍で)出て行くと決めてから、帰って来られるとは思っていなかった」。山形に再加入するDF熊本雄太の率直な思いだ。本人も「驚いた」というクラブからの要請を受け、1年で復帰。守備陣のリーダーとしての自覚を持ち、新シーズンに臨む。

 2018年に早大から山形に加入し、主力として経験を積んだ。21年途中に就任したピーター・クラモフスキー監督が慰留したが、シーズン終了後にJ1福岡へ。退路を断つ思いで、地元クラブでプレーする夢を追いかけた。

 一方で昨季は思い描いたシーズンにはならなかった。自身初のJ1挑戦となり、実績のある主力が残留した中で「超えていけるだけのエネルギーを出せず、課題が多く見つかった」。悔しさを抱えていた時に山形からオファーが届いた。「強化部、ピーターが必要としてくれた。成長できる」と葛藤の末に決断したという。「J1昇格の力になる」と自らを鼓舞する。

 東福岡高の教育理念「努力に勝る天才なし」を座右の銘として挙げる。本県在住は5年目を迎え、好物は庄内地方のすしで、お気に入りのスポットは湯殿山や各地の神社仏閣だという。21年に山形出身の女性と結婚し「(ファンに)報告するタイミングを逃して」と照れ笑いした。

 ◆くまもと・ゆうた 福岡県出身。東福岡高、早大を経て2018年に山形に加入し、1年目からセンターバックの主力を務めた。J2通算131試合で4得点。昨季はJ1福岡に完全移籍し、公式戦14試合に出場した。身長186センチ、体重83キロ。利き足は右。背番号3。27歳。

DF成瀬竣平

DF成瀬竣平

 J1名古屋から加わったDF成瀬竣平は、各世代別代表の経験を持つ。対人プレーの粘り強さに加え、アシストなどの攻撃面も見せ場で「いい攻めはサイドバックから始まる」と強調した。

 幼い頃はドリブル突破が持ち味のサイドハーフで、U―14(14歳以下)以降の世代別代表に名を連ねた。ポジション変更は名古屋の下部組織でプレーした高校3年時。トップチームの練習に参加する中で、サイドバックとしての適性を見せた。定位置を変えた後にも再び代表に招集される能力の高さを示した。

 プロとなった名古屋でアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を経験し、J1通算45試合に出場した。昨季はJ2岡山に在籍し、かつて山形を率いた木山隆之(たかし)監督から「前向きにをプレーする大事さ」を学んだ。新天地で掲げる目標の一つはプロ初ゴールで「きれいに決められればいいが、ちょこっと触っても1点」と貪欲だ。

 2024年パリ五輪出場を目指す世代で、山形からJ1のG大阪に完全移籍したDF半田陸(上山市出身)は代表入りを見据えたライバルだ。「代表歴も長く、意識する存在。陸に負けないぐらいの結果を残したい」と対抗心を燃やしている。

 ◆なるせ・しゅんぺい 愛知県出身。中学からJ1名古屋の下部組織に在籍し、2019年にトップチームに昇格。22年途中からJ2岡山に期限付きで在籍し、リーグ戦31試合に出場した。山形には育成型期限付き移籍で加入。身長166センチ、体重66キロ。利き足は右。背番号2。22歳。

モンテディオ山形

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