庄内地域に冬の訪れを告げるハタハタが、今年も不漁だ。しけ続きで出漁できない状況が追い打ちをかける。11月の水揚げ量は過去最低とされる昨年より増えたが、10月と合わせた漁獲量はほぼ変わらない。あす9日はハタハタの田楽を食べる庄内の伝統行事「大黒様のお歳夜(としや)」。スーパーなどは不漁を見越した対応を取り、流通関係者は「こんなお歳夜がいつまで続くのか」と頭を抱える。
県水産研究所によると、庄内浜の漁獲量は今年10月が3.1トンで前年同期比66%減、11月は9.4トンで前年の4トンを上回るが、この2カ月で計12.5トン。過去最低とされる昨年の計13.1トンより少ない。要因は特定できていないが、地球温暖化による海水温上昇で起きる海洋環境変化の影響も大きいという。
酒田市のスーパー「ト一屋」は昨年、不漁でハタハタの田楽を入れたお膳「大黒様セット」を販売できない状況だった。ただ需要があることから、丸干しのハタハタを代用し「なんとか尾頭付きを提供しようと考えた策」と担当者。今年は安定供給のためにと冷凍ハタハタを発注し、お膳を提供する。鮮魚は地物も売り場に並べるが「価格は1.5~2倍程度」と苦しい胸の内を明かす。
店でハタハタを焼く鶴岡市の梅津鮮魚店は例年、地物で約200キロを用意。昨年は秋田県を含め半分の約100キロにとどまった。今年は11月中から少しずつ地元のハタハタを仕入れ、40~50キロを冷凍保管。8日に約110キロを仕入れる予定だが12月に入ってからのしけの影響も受け、入荷は見通せない。店主の梅津亮一さん(59)は「注文は例年並み。予定通り確保できるか気が気ではない」。大黒様の「歳越し」は今年も大変そうだ。
ハタハタと大黒様のお歳夜 ハタハタは漢字で「鱩」などと書く。スズキ目で日本海を回遊し、雷鳴が響き水温が10度ほどに下がるこの時期、産卵のため沿岸に近づく。水深200メートルほどにいる2~3年魚を底引き網で漁獲。大黒様が年を越し妻を迎えるとされるお歳夜に、焼きハタハタの田楽、黒豆ご飯、黒豆なます、焼き豆腐田楽、納豆汁などを食べ、二股の「まっか大根」を供える風習がある。
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