さまざまな社会問題を題材に模擬裁判を演じて問題点などを提示している山形大生のグループが、9、10の両日に開く公演で昨今、問題となっている「ヤングケアラー」を取り上げる。近年調査が始まり、実態が明らかになっていないが、メンバーと同世代が抱える問題なだけに、当事者意識は強い。「家族の事情で人生の選択肢が狭まる若者がいる。目を向けてもらうきっかけをつくりたい」との思いで練習に励んでいる。
ヤングケアラーは大人に代わり日常的に家事や家族の世話をする子どもたちを指す。2020年~21年に初めて厚生労働省と文部科学省が実態調査するなど、近年、注目されている。当事者が子どものため負担を自覚できず、周囲が気付きにくいなどの理由で問題が潜在化しやすい。
メンバーはヤングケアラーの支援員、児童相談所の職員らを取材した。法制度が確立されていないなどの理由で支援が進めにくいとの声を聞いた。家族形態の多様化、保育・介護人材不足など、さまざまな要因が複雑に絡みあう現状から、特にラストシーンは何度も練り直した。脚本部長の人文社会科学部3年の芳賀信之介さん(21)は「見た人がほっとできる結末にしようか迷ったが、そうせず現実を示した」と語る。
「家族のことは家族で解決するという考え方が浸透しているが、ヤングケアラーは本当に家庭内の問題なのか、考えてもらいたかった」と語る。実行委員長の同学部3年佐々木裕紀さん(21)は「総勢約80人で1年かけて劇を作り上げた。公演を通じて何かを感じてもらえたらうれしい」と意気込む。
公演は9日が午後6時、10日が午後2時開演。会場は山形市の山形テルサ。チケットは前売り券300円、当日券400円。山形大生活協同組合か八文字屋本店で取り扱っている。
問い合わせは委員長佐々木さん070(2015)3406。
あらすじ
主人公は高校3年生の少女。母親、認知症の祖母と3人で暮らす。仕事で長時間、家を空ける母親に代わって少女が祖母の世話をしているが、ケアに時間を取られ、次第に友人関係や学校の成績で悩みを抱えるようになる。介護に耐えきれなくなったある日、祖母の口をタオルでふさぐ殺人未遂を犯してしまう。警察の捜査、少年審判へと移行する過程で少女が抱えていた問題が明らかになっていく。
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