県内2図書館所蔵、植物標本をデジタル化 山形大とティスコ運輸(山形)、劣化防ぎ確実に継承

2022/9/25 09:42

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 山形大は山形市内の運送業者と連携し、県内二つの図書館が所蔵する植物標本をデジタル化した。高性能のスキャナーで画像として記録することで、原物の標本の劣化や破損を防ぎ、確実に継承することが可能となった。作業工程を県内で完結させることで、標本や資料の輸送に伴うコストや負荷を抑えることもできる。

 同大講師の阿部宇洋(たかひろ)さん(歴史民俗資料学)とティスコ運輸(菅原茂秋社長)が連携した。同社はデジタルアーカイブ部門を持ち、学術資料を「非接触、非破壊」で撮影することができる高性能スキャナーを所有している。

 阿部さんの監修と同社による撮影で、庄内町立図書館が所蔵する「加藤元助植物標本」の1129点がデジタル化された。加藤元助(1885~1976年)は同町廻館出身の植物学者。加藤に著作物はなく、標本集は残された唯一の貴重な資料という。

 庄内町立図書館から昨年11月に相談を受けて作業が進められた。標本集には採集から100年が経過した植物もあり、種子や葉の剥落も見られた。扱い時に破損する可能性もあり、原物の公開は難しい状態だったが、鮮明なデータ資料として生まれ変わった。

 このほか高畠町立図書館が所蔵する「薬用植物標本集」2冊を手掛けた。デジタル化はかつて、県外業者への委託が多かった。しかし県外への搬出は移動距離が長いことなどから、費用や資料管理の負担が重くなる。阿部さんは県内でデジタル化を完結させる「地産地消」の重要性を訴え「こうした取り組みが進めば教育にも活用でき、学術資源として大学にも蓄積される。後世に伝えられる環境が整備できる」と、今後もデジタル化を進める考え。

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