地域守る輪中堤、生まれた安心感 戸沢・蔵岡地区、豪雨被害から4年

2022/8/12 09:51
高さ約2メートルの輪中堤と地区会長の長沢一郎さん。工事の完了は来年3月を見込む=戸沢村蔵岡

 最上地域に大きな被害をもたらした2018年の8月豪雨発生から今年で4年となる。同じ月に2度にわたって浸水した戸沢村蔵岡地区では集落を囲む輪中堤(わじゅうてい)の工事が、追加工事が必要になった一部を除きほぼ完了した。同規模の大雨が降っても1戸を除く71戸を守ることができるという。置賜地域を襲った記録的大雨の甚大な被害が明らかになる中、地区の現状と住民の思いを聞いた。

 現在、蔵岡地区は約1.1キロにかけて高さ約2メートルの堤防に囲まれている。地区会長の長沢一郎さん(67)は「雨のたびに被害を心配していた中で、精神的な安堵(あんど)感が一番大きい」と工事の進行とともに変化した心境を語る。

 県最上総合支庁河川砂防課によると、工事は20年11月に始まった。水分量の多い地盤が見つかった集落東側の角間沢川の右岸約200メートルと左岸約50メートルを除き完了。周辺の堤防が未完成の1戸については、天気予報を確認し、危険が迫った場合に大型土のうを積んで対応する。追加工程は地下3メートルほどまでの土壌にセメントを混ぜて固める作業だ。当初7億円としていた事業費は輪中堤の建設に伴って、整備が必要になった農道や水田の水路の工事費などを含め14億円を見込む。

 工事が進む一方で、用地買収により、氾濫した角間沢川付近の4世帯が住み慣れた家からの退去を余儀なくされた。1世帯は同地区内の空き家に移り、残りの3世帯は転居した。家族6人で新庄市に引っ越した庄司馨さん(76)は「住み慣れた地域を離れ、さみしい気持ちもある。3日から4日にかけての置賜地域の大雨のような想定外もあるかもしれない。残った人にはさらに防災意識を高め、蔵岡で生活し続けてほしい」とする。

 輪中堤がある景色が日常になりつつある中、長沢さんは「何度も地区で集会を開き、人命を守るという大きな目標に向かって、住民同士歩み寄ったおかげでここまで来ることができた」と振り返った。「ふるさとを出ていく選択をした人の気持ちを忘れてはいけない。残った住民として、声掛けや話し合いの場などで想定外の災害に備える意識を共有していきたい」と思いを強くしている。

◆2018年8月豪雨 2018年8月5、6日と30、31日に最上、庄内の両地域を局地的に襲った。暖かい空気と冷たい空気がぶつかり合う前線に暖かく湿った空気が流れ込んだことが原因だった。戸沢村蔵岡地区を流れる角間沢川が氾濫し、同地区は2度にわたって当時の集落全84戸が被害を受けた。

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