県最賃32円引き上げ854円に 審議会答申、目安上回り最大

2022/8/11 11:26
県最低賃金を32円引き上げるよう答申する山形地方最低賃金審議会の村山永会長(右)=山形市・山形労働局

 山形地方最低賃金審議会(村山永会長)は10日、現在1時間822円となっている県最低賃金を32円引き上げ、854円とするよう小森則行山形労働局長に答申した。中央最低賃金審議会の目安を2円上回り、時給方式になった2002年度以降で最大の上げ幅。使用者側委員全員が反対したが、物価高騰と宮城県などとの賃金差を背景に賛成多数で決定した。10月6日から効力が発生する予定。

 山形地方最低賃金審議会は6月28日に小森局長から諮問を受けた。今年は例年7月中に行われる中央最低賃金審議会の目安の提示が8月1日にずれ込み、本県を含むDランクは30円の引き上げと示されていた。専門部会で計6回議論。労働者側は物価高による生計費の上昇や南東北の隣県との賃金差による労働者流出を理由に、目安を上回る引き上げが必要と訴えた。使用者側は原材料・エネルギー価格高騰が業績を圧迫し、支払い能力が低下していると主張していた。

 この日、山形市の山形労働局で開催した第3回審議会で専門部会が最低賃金を854円とするよう報告。村山会長を除いた採決で、使用者側委員5人が反対したものの、労働者側委員5人、公益委員4人の計9人が賛成し、報告通りの答申を決定した。審議会が結審した東北5県の中では、最も大きい引き上げ幅。宮城は30円アップの883円、青森、秋田は31円アップの853円、福島は30円アップの858円。宮城と本県の差は2円縮まり29円。

 また、政府に対し、特に本県を含む賃金の低い県の中小事業者への支援拡充を強く要望する付帯条項も決めた。業務改善助成金を原材料費高騰などにも対応することや労務費、コスト上昇分を価格転嫁できる環境整備を求める。

 審議会後、労働者側の小川修平連合山形副事務局長は「新型コロナウイルス禍で最も影響を受けた非正規労働者や最低賃金に近い賃金で働くひとり親の女性にしっかり届く金額になるよう協議に臨んだ。目標の千円には道半ばだが、南東北での格差是正は進んだのではないか」と振り返った。

 使用者側の丹哲人県経営者協会専務理事は「コロナ禍に加えて原材料・エネルギー価格高騰が長期化し、事業継続を断念する事業者もいる中、大幅引き上げには賛成できなかった。大企業はコスト上昇分の負担を下請けの中小に負わせている。取り引きの適正化、価格転嫁できる環境整備を求める付帯条項を使用者側から提案した」と話した。

 異議申し立ては8月25日まで。県最低賃金が32円アップすれば県内では約3万2700人の賃金引き上げが必要となる。

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