緊急連載・豪雨の傷痕(中) 「堤防が必要」増す切迫感

2022/8/10 08:27
増水した最上川と浸水した大江町の百目木地区=4日午前6時41分、同町左沢

 本県上空に線状降水帯が発生し、県内は3日から4日にかけて激しい雨に襲われた。記録的豪雨で各河川は増水し、最上川上流で堤防からの越水(えっすい)1カ所、堤防のない場所から浸水する溢水(いっすい)が4カ所で発生した。うち大江町左沢の百目木(どめき)地区は2020年7月豪雨でも浸水被害に遭った。わずか2年で繰り返された災害。住民からは「災害のサイクルが短くなっている気がする」「一日でも早く堤防を造ってほしい」との声が上がる。

 過去に幾度もの水害に遭いながらも住環境に強い愛着を感じてきた百目木地区の住民たち。だが、2年前の水害を契機に「堤防が必要」との考えは多くなった。今回の被害で切迫感は増している。

■複雑な気持ち

 菊地久美さん(55)は「本当はこのままがいいけど、2年に1回起きると複雑な気持ち」と打ち明ける。佐竹久子さん(74)も「大雨のたびに大変な思いをするより、安全なところで生活した方がいい」。左沢2区長の小林仁さん(70)は「この景観は素晴らしい。だが、また次の水害が来るのではないか。地域で堤防を望む思いは強くなっている」と語る。

 百目木地区の堤防整備計画は住宅移転を伴い、完成予定は27年度末。松田清隆大江町長は今回の被害で早期完成の必要性を痛感したとし「(スケジュールを)1年でも縮めて工事を早く実施してほしい」と強調する。

 20年7月豪雨を踏まえ、国土交通省は県、最上川沿いの市町村などと連携して21年1月に緊急治水対策プロジェクトを策定。最上川の流下能力を高める河道掘削をはじめ、堤防や分水路、水位を低減させる遊水地の整備などに取り組んでいる。

 河道掘削は全体計画の90万立方メートルのうち、22年度中に半分の約45万立方メートルを終える見通し。堤防は大蔵村白須賀地区が21年度に完成し、村山市長島地区が本年度中に完工の見込み。百目木地区に加え、大石田町横山・大石田地区などでも事業が進められている。県管理の支流も堤防や調節池の整備などを進めている。

■一定の効果も

 途上段階の治水対策プロジェクトだが、今回の豪雨で一定の効果が垣間見えた。20年7月豪雨の際、最上川の越水は4カ所、溢水は5カ所で発生した。今回の豪雨は、20年7月を上回る1日当たり降水量を置賜の4観測地点で記録しているが、越水は1カ所、溢水も4カ所となっている。

 県議事堂に4日夕、緊急に集まり、対策本部を設置した県議会第2会派・県政クラブ。所属県議が各地の被害状況を持ち寄った際、「20年7月豪雨よりも(西村山地域の)最上川の水位が1メートルほど低い。プロジェクトの効果が出ているのではないか」との見解が示された。とはいえ、住民感情を考慮すれば堤防の整備は急務だ。

 「数十年に1度」とされた水害は短いスパンで頻発している。温暖化などを背景に被害規模の拡大が懸念される現下、ハード面の整備に加え、避難行動の意識醸成などを含めた治水対策プロジェクトの着実で迅速な推進が求められている。

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