家屋倒壊、残る泥 住民、悲痛な声「経験通用しなかった」

2022/8/5 10:50
河川増水で家屋が倒壊した現場=4日午前9時45分、飯豊町萩生(ドローン使用)

 記録的な豪雨は穏やかな日常を一変させ、置賜地域を中心に深い爪痕を残した。飯豊町内の各地では道路が陥没し、店舗や家に泥水が流れ込んだ。泥のかき出しや家財の運び出しに追われる住民たち。道路脇に座り込む男性の表情には疲労がにじむ。

 給水所にはポリタンクを持った町民が次々と訪れた。孫らと同居する女性(64)は「哺乳瓶を洗う水が必要。早く復旧してほしい」と悲痛な思いを口にした。崩落した大巻橋近くに住む五十嵐富美子さん(77)は「雨水が屋根から大きな塊となって落ちてきた」と、改めて線状降水帯の恐ろしさを語っていた。

 川西町の川西ダリヤ園そばの鏡沼は擁壁の一部が崩壊し沼の水がすっかりなくなっていた。黒川や誕生川沿いでは腰ほどの高さまで水が上がった。警察や消防団が取り残された住民を捜索。同町洲島では冠水で孤立した住宅から80代女性を含む4人が警察の救命ボートで救助された。住民は「いつまでも降りやまなかった。今までの経験が通用せず、恐ろしかった」と声を震わせた。

 行政や宿泊施設も夜を徹して懸命の対応を続けた。施設の3分の2が床上浸水した飯豊町介護老人保健施設「美の里」では、入所者23人のケアと浸水対策に奔走した。

 長井市は防災機能を強化し昨年5月に開庁した市役所新庁舎で初めて避難所を開設した。会議室や議場、廊下も使い、段ボール製の簡易ベッドと間仕切りを計約50セット配置。高齢者や家族連れなどが利用した。市民200人が身を寄せ、60代の女性は「体を横にして休めたのはありがたい」と話した。同市のタスパークホテルは浸水被害にあったが、排水作業をしながら宿泊客の対応に当たった。

断水や冠水・被害、徐々に明らかに

 置賜地方を中心に襲った記録的大雨は一夜明けた4日、被害の状況が徐々に明らかになった。

■避難所

 置賜、西村山、村山各地方の18市町に設置された。順次閉鎖され、県のまとめでは午後3時現在の避難者は川西町や大江町、寒河江市などで約280人。

■断水

 飯豊町はほぼ全域の約2300戸、川西町朴沢地区でも約40戸が断水した。

■建物被害

 米沢、寒河江、村山、南陽、河北、大江、大石田、川西の8市町で複数の住家が床上床下浸水した。

■農業被害

 置賜、村山地方で田を中心に冠水被害があった。飯豊町小白川では土砂がアスパラガス畑などに流入。河北町は溝延などで約124ヘクタールの田や果樹・野菜畑に被害が出ている。川西町や飯豊町では農業用ため池の堤が決壊した。

■通行止め

 国道113号の小国町綱木箱口―飯豊町手ノ子間、国道121号の米沢市入田沢―福島県境の通行止めが続いている。米沢市入田沢の国道121号が欠損しているのを4日早朝、県職員が発見した。脇を流れる鬼面川が増水し流されたとみられる。

■停電

 米沢、長井、南陽、西川、大江、高畠、川西、小国、飯豊の9市町で延べ3580戸が停電したが、午後8時半ごろまでに順次復旧した。

■鉄道

 JRは山形新幹線つばさが福島―新庄間で終日運転を見合わせるなど各線でダイヤが乱れた。フラワー長井線は終日運転を見合わせた。

本社・避難所に朝刊、被災地に号外

朝刊を受け取る避難者=4日午前7時1分、川西町小松小

 置賜地域を中心とした記録的大雨で、川西町内の各所に避難所が設けられたことを受け、山形新聞社は4日早朝、同町内6カ所の避難所に朝刊を届けた。

 朝刊のほか、支援物資として、タオルと給水袋も配布した。このうち小松小体育館では約20人に新聞を届けた。雨が弱まった夜明けごろから帰宅する人もいたが、子ども連れの家族を中心に、興味深く紙面をめくり情報を確認していた。

 5人の孫を含む家族9人で避難した女性(66)は「各地で被害が出ているようだ。避難所で、子どもたちの様子が心配だったけど、雨が落ち着いたようでほっとしました」と話した。

大雨被害の状況を伝える号外が配布された=飯豊町・道の駅いいで

 置賜地域を中心に甚大な水害が発生したことを受け、山形新聞社は4日、山形、米沢、南陽、飯豊の4市町で号外を配布した。

 「置賜 記録的大雨」などの見出しで、警察官が住民を救助する場面や崩落した橋を捉えた写真とともに各地の被害状況や、道路の寸断で孤立状態となった小国町の様子を報じた。

 飯豊町の道の駅いいでで受け取った小国町岩井沢、パート従業員鈴木美雪さん(58)は「こんな雨は初めて」と不安げに語った。

 同道の駅は国土交通省の「防災道の駅」に選定されており、3日夜は施設を仮設避難所として解放、身を寄せた県内外の約50人に食料が配られた。

4市町には給水袋

給水袋を受け取る後藤幸平町長(左)=飯豊町役場

 大雨で大きな被害を受け、困っている人たちに少しでも役立ててほしいと、山形新聞社(寒河江浩二社長・主筆)は4日、置賜4市町に6リットルの非常用給水袋100個をそれぞれ寄贈した。

 長井、川西、白鷹、飯豊の各市町に保科裕之取締役総務局長が訪問し、内谷重治長井市長や原田俊二川西町長らが対応した。

 飯豊町では断水の被害も出ており、受け取った後藤幸平町長は「水が一番足りない。自衛隊の給水車を頼んでいるものの、みんな容器を用意しているわけではなく、町の在庫を配っていたが、まだまだ必要だったので非常にタイミングが良かった」と感謝の言葉を述べた。

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