道途切れ、物消え 県内豪雨「小国一時孤立、疲労の色」

2022/8/5 09:48
大雨の影響で路面の一部が崩落した国道113号=4日午前11時55分、飯豊町手ノ子

 記録的大雨から一夜明けた4日、長井市や飯豊町、川西町では浸水被害が相次ぎ、住民たちが片付け作業に追われた。国道113号の寸断で一時孤立状態となった小国町では生活物資の確保などに苦慮。2年前と同様に最上川が氾濫した大江町では早期の堤防整備を求める声が上がった。

■ルポ

 小国町は、大動脈である国道113号が飯豊町側と新潟県側の双方で全面通行止めとなったことに加え、JR米坂線も運休し、3日夜から4日夕まで孤立状態となった。特に113号通行止めの影響は大きく、物流がストップ。4日日中に唯一つながっていた飯豊町中津川から叶水地区につながる狭い県道を通り、小国町に入った。コンビニの駐車場は出口を失った大型車両であふれ、食料品売り場は空の棚が目立った。

 113号は飯豊町手ノ子で3日午後7時から、新潟県関川村金丸で同8時から通行止めになっていた。飯豊町から入る県道は狭い峠道で、対向車と慎重にすれ違いながら、小国町内に入った。113号に出ると、すぐに目に入ったのはコンビニの駐車場に止まる多くの大型トラックだ。新潟、宮城ナンバーが6台、7台と並び、空きスペースは少ない。東西両方向が通行止めになり、行き場を失った車が集まっていた。5日朝までに宮城県から岐阜県へ米を届ける予定だった運転手の男性(59)は運転席に座ったまま、疲れた表情でたばこを吸い「なんとかしてほしい」とつぶやいた。

パンが入荷せず棚から商品が消えたスーパー=4日午後3時8分、小国町小国町

 町中心部にある「白い森ショッピングセンターアスモ」内のスーパーマーケット「金十(かねじゅう)商店」をのぞいた。4日は毎日納品されるパンや豆腐、生鮮食品などの入荷がなかった。午後3時ごろには、買い物客の姿はあるものの、パンは売り切れ、野菜売り場も商品はまばら。昼には多くの弁当が並ぶ総菜売り場も空きが目立った。カップラーメンをまとめて買い求める客もいたという。塚原和子店長は「町内産の野菜を集中して扱う日もあるが、生産への影響も心配」と話した。

 薬や化粧品を扱う商店「まるいちヘルス&ビューティー」の今和永(かずひさ)代表(50)は「雪で物流が遅れることはよくあるので町民は1日分くらい食べ物の蓄えがあるからあまり慌てていないかも」と分析。「ただ長くなると困るね」と続けた。

 町役場の防災担当部署では、職員が慌ただしく仕事をしていた。伊藤哲史行政管理室長兼危機管理主幹補佐は「町外への道だけでなく、町内の集落への道も通れない所がある。まずは道」と強調した。災害現場では、地元の小国署員が奮闘していた。町立病院は、この日、山形市から医師が、新潟県から歯科医師が来て診察する予定だったが来られなくなり、一部の診療ができなかった。中津川典広事務次長は「入院患者の食材も5日までは持つが、それ以降は分からない。早く復旧してほしい」と祈るように語った。

主要交通網、東西で被害

 山に囲まれた小国町につながる主要交通網は、町の真ん中を横断する国道113号とJR米坂線のみ。隣接する飯豊町で道路や鉄橋が崩落し、新潟県側も含め周辺の所々で冠水が発生した。町の東西で同時に被害が相次いだことが一時、孤立状態となる要因となった。

 利用できなくなったのは、新潟県につながる国道113号の一部とJR米坂線。113号は山形県側が飯豊、小国両町を結ぶ新宇津トンネルの飯豊町側で大きく道路が陥没したため、飯豊町手ノ子から小国町綱木箱口まで、新潟県側は冠水などで県境部が、それぞれ通行止めとなった。

 米坂線は、飯豊町の羽前椿―手ノ子駅間で小白川に架かる鉄橋が崩落し、運休となった。運転再開の見通しは立っていない。

飯豊側の113号、復旧見通せず

 国道113号は4日午後5時15分、新潟県側で約21時間ぶりに全面通行止めが解除され、国道290号が迂回(うかい)路となり、孤立状態が解消された。しかし、飯豊町側の開通の見通しは不明なまま。大動脈“寸断”の影響は大きい。

 約800人が働き、小国町の雇用を支えるクアーズテック小国事業所も稼働しているものの、4日に届くはずの資材が届かなかった。大型車で新潟方面、飯豊方面双方から商品や資材を運搬する事業所は多く、町外に通勤する町民も少なくない。飯豊町に通勤する小国町沼沢の会社員男性(27)は、3日夜に帰宅できず、白鷹町の親類宅で一夜を過ごした。スーパーでの買い物や給油も長井、飯豊方面に向かうことが多いという。夫が飯豊町に通勤するという小国町五味沢の女性(59)は、飯豊とつながる狭い県道を夫が通ることを心配する。多くの町民、事業所が「113号の早期復旧を」と声をそろえた。

切実「堤防を早く」2年前も被害・百目木(大江)

最上川が氾濫し住宅街に水が流れ込んだ=4日午前8時9分、大江町左沢

 2020年7月豪雨で最上川が増水し、19戸が浸水した大江町左沢の百目木(どめき)地区。堤防がない場所にあり、今回の豪雨災害でも十数戸が浸水した。相次ぐ被害に住民からは「またか」。ため息交じりの声が聞こえた。

 同地区には3日深夜に川から水があふれ、4日未明にかけて水位が上がった。町民ふれあい会館には同地区などから最大21世帯55人が避難した。一夜明け百目木の50代女性は「またか、という感じだった」と疲れた表情。

 「家に水が上がったらどうしようと気になり、なかなか眠れなかった」と明かす。夫と2人で身を寄せた五十嵐弘子さん(77)は「災害の間隔が短くなっているように感じる」と懸念を語った。

 同日朝、自宅近くで最上川の激しい流れを見ていた会社員菅井時弘さん(63)。腰の高さまで床上浸水したといい「何もしようがない。夜中に玄関から水が入ってきて、もう逃げるだけだった」と淡々と語った。避難所から自宅を見に戻った無職男性(58)は「この10年間で5、6回ほど水が上がっている。諦めというか、仕方ない」と話した。同地区では堤防整備の計画が進み、そのさなかの被災。会社員阿部正さん(62)は「雨の降り方が以前と比べて激しくなっている。早く堤防を造ってほしい」と願った。

 午後になり水が引いていくと、住民は自宅や車庫に入った泥の片付けに汗を流した。家族を手伝っていた大江中3年の菊地逢乃さん(15)は「前回の豪雨がトラウマになっている。堤防ができるまで二度とこのような災害が起きてほしくない」と話し、重い泥をスコップでかき出していた。

転落車両、捜索続く・飯豊

県警機動隊などが大巻橋から転落したとみられる車両を捜索した=4日午後1時29分、飯豊町小白川

 記録的大雨に絡み、崩落した飯豊町小白川の大巻橋から走行中に転落したとみられる車両1台の捜索が4日、現場周辺で始まった。県警機動隊、長井署、西置賜行政組合消防本部の計約20人が陸上から、県警ヘリ「がっさん」が上空から捜索したが、発見には至らなかった。5日午前10時から再開する予定。

 長井署は4日、行方不明届1件(1人)を受理した。転落した車両との関連を調べている。この日捜索隊は橋が架かっていた小白川の下流域と、置賜白川との合流点付近を中心に手がかりを探した。

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