体が持っていかれそうな強風と雨の中、一歩一歩踏み締めながら先を目指した。3日、飯豊連峰縦走第4日は終始悪天候の中の山行となった。一行はできるだけ早く動き出すため、夜明けに合わせて御西小屋を出発。飯豊山、切合(きりあわせ)小屋を経由して、予定していた三国小屋にたどり着いた。
2003年から9年間、本紙の夏山縦走企画に参加した隊員1号にとって、悪天候で思い出すのは05年の吾妻連峰縦走だ。あの時は台風の影響をまともに受けて、体が本当に吹き飛ばされそうな思いをした。今回はそこまででなかったとはいえ、吹きさらしの場所はさすがにきつい。
御西小屋から飯豊山への登りや、山頂から一気に下る御前坂では、突風に体がよろめいた。
御前坂を下り切ると、今度は痩せた岩稜(がんりょう)を鎖伝いに進む御秘所が待っている。記者2人はおっかなびっくりだが、ボルダリングも経験している山形大ワンダーフォーゲル部の奈良悠作さん(22)=山形大農学部4年=は物足りなさそうだ。
御前坂、御秘所といった地名は、飯豊山が信仰の山として登拝者を集めていた歴史を今に伝える。
御秘所の近くには姥(うば)権現の石像がある。昔、小松村(現川西町)に、女人禁制の飯豊山に一度は登ってみたいと願う女性がいた。男より長い時間をかけて精進潔斎をしたから大丈夫だろうと山に入ったが、頂まであと一息の所で心身ともに疲れを感じ腰を下ろしたところ、そのまま石になってしまった。そんな伝説がある。
切合小屋では、飯豊町の大日杉登山口からの道と合流した。雨は激しいままで、休息を取ったもののあまりのんびりせずに三国小屋に向かった。
岩を登り下りする道をひたすら進み、午前のうちに小屋に到着。ぬれた物を乾かしたり昼食の準備をしたりしていると、全員の携帯電話が一斉に鳴った。土砂災害への警戒を呼びかけるエリアメール。大雨に見舞われているのは山だけではないと実感した。
この日の昼食は温かいみそラーメン。冷えた体に染みた。
飯豊連峰縦走も残りわずかだ。
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