「今の若者は選挙に関心がない」。年齢を重ねるにつれ、誰もが一度は使ったであろうフレーズ。過去の参院選の年代別投票率を見返してみると、約30年前も相対的に20代は低い傾向が見て取れた。山形新聞は「寄り添うぶんちゃん取材班」で、30代以上を対象に投票に行くようになった年代を調査。アンケートでは結婚、出産などライフステージの変化を機に社会に対して関心を持つようになり、投票に行くようになったとの声も寄せられた。Z世代も将来的に高くなる?
総務省によると、参院選の年代別投票率(抽出調査)は1989年の第15回以降の記録が残っている。多くの社会党女性議員が誕生した「マドンナ旋風」で知られる第15回では、20代の投票率は47.42%。当時の30代以上が65~79%のため、おおむね17~31ポイント低い。その後計10回の参院選の20代の投票率は25~36%で推移し、各年代で最も低かった。
本県も同様の傾向がみられた。県選挙管理委員会によると、県内で参院選の年齢別投票率の記録が残るのは2004年の第20回以降。5歳刻みでまとめており、第20~25回で20~24歳だった年齢層は、いずれの回の参院選でも各年齢区分の中で最低だった。
一方で、第20回時に投票率32.98%だった20~24歳の年代は、35~39歳になる15年後の第25回では50.59%にアップした。年齢が上がるにつれ、投票所に足を運ぶ人の割合が増加したことがうかがえる。
取材班のアンケートにもこうした傾向を裏付けるような意見を寄せてくれた人がいた。公認心理師や看護師、タクシー運転手として働く市川広美さん(53)=山形市=もその一人。20代の時、政治は遠い世界のことだと思っていた。「投票に行かなかったのは無関心以外の何ものでもなかった」
投票に行き続けるようになったのは35歳の時。結婚、出産を経てマイホームを購入し「大人の自覚が持てた」と振り返る。さらに子どもの保育園探しに苦労した一方、子どもの医療費無料化の恩恵を受けた経験などから、政治と生活が密接にかかわっていると実感できたことが大きかった。
現在は「投票に行かないとの選択肢はない」と言い切る。だからこそ、Z世代の若者に向け「今は関心が薄いかもしれないが、国に対し、『ああしてほしい』『こうしてほしい』との思いはあるはず。投票は国民の責任。一緒により良い国にしていきたい」と訴えた。
取材班のアンケートでは、親をはじめとする家族の背中を見て自然と投票所に足を運ぶようになったとの意見も多かった。若者の投票率アップには若者だけでなく選挙権を持つ中高年世代の関心もより一層、高めることが重要となりそうだ。
定年退職後は欠かさず投票に行っている後藤正行さん(76)=天童市=は「恥ずかしながら、現役時代は忙しくて投票に行けないこともあった」と自らを省みる。現役を退いた後は国会中継を視聴し、新聞にじっくりと目を通す。切り抜きをスクラップし、若者らに日本の現状を知ってもらい、声を上げてもらいたいと、政治に関する意見を新聞に投稿している。
日々の原動力は「多くの人が政治に関心を持たなければ、政治は変わらない」との思いがあるからだ。近年は国のかじ取り役を担う政治家たちの不祥事が相次いでいる。後藤さんは強調する。「若者はもっと怒らないといけない。ぜひ投票で意思表示をすべきだ」
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