参院選・争点の実情(1)介護 人手不足いつまで続く

2022/6/29 15:16
人材不足が深刻な介護現場。「ながまち荘」ではアンガさん(右から2人目)らインドネシア人4人が活躍している=山形市

 参院選が公示され29日で1週間となった。各候補者、政党は介護や子育て支援、円安、ロシアによるウクライナ侵攻を受けた物価高、外交・安全保障などをテーマに論戦を繰り広げている。県内の争点の現場を訪ね、実情に迫った。

 山形市長町の特別養護老人ホームながまち荘。柔らかな日差しが差し込む多目的室で、車いすの高齢女性2人と談笑する青年の姿があった。「朝何食べだの?」「鼻水拭こう」―。優しく語り掛け、女性の顔をのぞき込む。

 青年はインドネシア出身のアンガ・ルスマヘンドラさん(31)。7年前に来日し、2019年に介護福祉士の試験に合格した。母国に老人ホームと日本語学校をつくる夢を描き、日本人の同僚と共に毎日、お年寄りたちの世話に汗を流す。

 介護現場は深刻な人材不足に直面している。厚生労働省によると、20年4月末の全国の要介護認定者は669万人と20年前の3.1倍に。このままでは「団塊の世代」全員が75歳以上になる25年には介護職員約32万人が足りなくなると試算する。本県も同様で、山形労働局によると、県内の介護サービス職の22年4月の有効求人倍率(常用)は全業種平均の1.28倍を大きく上回る2.50倍だ。

 ながまち荘を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会支部山形県済生会は年度ごとの定期採用について「何とかできている」とするが、欠員が出た場合などの年度途中の採用は「非常に厳しい状況」と明かす。

 施設は解決策の一つとして10年から経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアの若い介護福祉士候補生を受け入れてきた。現在は看護師7人を含む介護職員約50人のうち4人。現場をまとめる会田るみさん(52)は「全員母国の看護師資格を持っており、真面目でよく働いてくれる。なくてはならない存在」と頼りにする。

 介護職員の負担軽減のため、施設は清掃などの生活支援に当たる地域の高齢者や障害者を雇用しているほか、介護記録の音声入力の導入も検討している。

 国は人材確保に向け、介護報酬の加算などで賃金を引き上げる処遇改善に取り組んできた。県老人福祉施設協議会長を務める施設長の峯田幸悦さん(64)は「根本的な解決にはこの先どうなるか分からない加算ではなく安定的な基本報酬の引き上げを」と求める。“頼みの綱”の外国人材も「継続的に良い人材を確保できるとは限らない」と危機感をあらわにする。日本語学校など彼らの生活をサポートする環境がないと、選んでもらえないためだ。

 仮に外国人材を確保できたとしても、日本でどれだけ働けるかは未知数との指摘もあり、日本人の働き手を介護現場に呼び込む総合的な対策も重要だ。

 訪問介護サービスを手掛ける南陽市の「ほのぼのケアサービス」は、登録している利用者約115人に対し、スタッフは15人。「何とかやりくりできているが、1人当たりの負担は大きい」。施設長の色摩繁康さん(55)は、職員の疲労の蓄積を懸念する。

 職員は1日に6、7軒を訪問する。欠員が出ると、運営母体の社会医療法人公徳会の別事業所から補充している。「やりがいのある仕事。国には処遇改善のほか、イメージアップにつながる広報などの施策を期待したい」と色摩さん。

 職員の小川美由紀さん(36)は、利用者一人一人の介護計画を作成する傍ら、各家庭を回る。「両立は大変。計画書を作ることができる人材は限られており、マンパワーが不足している。今後、訪問介護に対するニーズは高まっていく。人材確保がスムーズにできるような体制を国に整えてほしい」と語り、利用者宅に向かう車に乗り込んだ。

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]