糖尿病薬で脳腫瘍治療 国立がん研と山形大、医師主導の治験開始

2022/6/29 12:19
園田順彦脳神経外科学講座教授(右)、北中千史腫瘍分子医科学講座教授が中心となり臨床試験に入る=山形市・山形大医学部(撮影時のみマスクを外す)

 国立がん研究センターと山形大の研究チームは28日、膠芽腫(こうがしゅ、悪性脳腫瘍)に対し、糖尿病の薬と抗がん剤を併用する治療法の有効性を確かめる医師主導の臨床試験(治験)を6月から始めたと発表した。チームはこの併用法が確立すれば安価に治療ができ、他のがんに応用できる可能性もあるとしている。

 悪性脳腫瘍は手術後に放射線と薬で治療を行うのが一般的だが、短期間で再発することが多く、再発の抑制が課題となっている。

 チームはこれまでの研究で、脳腫瘍のマウスのがん幹細胞に糖尿病治療薬「メトホルミン」を投与すると、幹細胞の機能を喪失させ、腫瘍の再発を抑えられることを突き止めた。人に投与する前段階の試験を2021年3月から実施し、安全性に問題ないことも確認した。

 6月からの臨床試験は山形大など全国5施設で実施。患者15人が参加し、治療の有効性を2年かけて調べる。

 山形大医学部付属病院(山形市)が臨床試験を行う全国5施設に入った。同病院は、難治がん膠芽腫をはじめ脳神経外科の治療で高い実績がある。園田順彦脳神経外科学講座教授が中心となり、治療法の基礎研究を行った北中千史腫瘍分子医科学講座教授とともに臨床試験を進める。

 両教授は「膠芽腫の再発を抑えることが目標。安価な糖尿病治療薬『メトホルミン』を使い、新たな治療の選択肢を確立できるよう貢献したい」とした。

 症例数は全国5施設で患者15人。このうち同学部付属病院は3人を目安に臨床試験を行う方針。20~75歳の初発患者で、初期治療として放射線と抗がん剤「テモゾロミド」による薬物療法の実施済みのほか、重篤な全身合併症がない人が対象となる。

 臨床試験は、膠芽腫の標準治療である抗がん剤「テモゾロミド」の服用を最初の半年間続け、同時に「メトホルミン」の服用は1年間続ける。患者の状態に加えて腫瘍の状態を磁気共鳴画像装置(MRI)で定期的に確認し、有効性を判断する。両教授によると、数年後には有効性について評価できる見通しで、有効性が確認できれば広く膠芽腫の患者の治療に使用できる可能性がある。

 北中氏は「膠芽腫を再発しないか不安を抱えている患者は多い。その不安から解放したい」、園田氏は「有効性を証明できた場合、将来的には膠芽腫にとどまらず、他のがん腫瘍への応用も期待される」とそれぞれ話した。

 膠芽腫は治療開始からの5年生存割合が15%程度という。急速に言葉の障害や手足のまひが進み、新規治療の開発は進んでいない。

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