「人生会議」をしてみませんか―。終末期に望む医療やケアなどに関し当事者が周囲と共有する機会をつくってもらおうと、山形市は普及啓発のための動画を制作した。介護予防から生涯の最期までを取り上げ、持病がありながら趣味を楽しんだり、親のみとりを経験したりした市民たちの声を盛り込んだ。住み慣れた環境で過ごすための在宅療養の選択肢があることも紹介している。
終末期に望む医療、ケアを共有
終末期に希望する医療、どのように暮らしたいかなどについて医師や家族と事前に話し合う「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」は、「人生会議」の愛称で国が普及を進めている。体調や環境の変化などに応じ、周囲と繰り返し意見を交わすことが重要とされている。
山形市の高齢化率は2020年の29.6%から40年には36.4%に上昇し、85歳以上の人口は1.3倍の約1万8500人に増加すると見込まれる。市が20年に高齢者を対象に行ったアンケートでは、「介護等が必要になっても自宅等で生活を続けたい」と答えた人が42.7%だった一方、24.2%は「わからない」と回答していた。
こうした結果から、市は在宅療養のニーズが一定数あるものの、選択肢として十分に浸透していない実態があると分析。人生会議に加え、在宅療養についても理解を広げてもらおうと動画を制作し、市公式ホームページで公開している。
動画は、介護予防や健康寿命延伸のため体操などに取り組むお年寄り、持病を抱えながらも趣味のカメラを地域の活動に生かしている高齢男性、訪問介護・入浴や往診などを利用して在宅療養を実践する家族、親を自宅でみとった女性らの姿や声を約45分間にまとめた。全編にわたって市民が登場し、関係機関や地域の協力を得て作り上げた。
市長寿支援課は地元に密着した構成としたことについて「『山形市において』という点を大切にした。より身近に、自分ごととして捉えてほしい」と狙いを説明。「介護予防などに取り組む元気な段階から、周囲との話し合いを重ねることを提案している。動画を通じ、老いや最期について考えることの抵抗を取り除いていきたい」としている。
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