今村さん直木賞、柚月さん受賞ならず 米沢さんとダブル受賞

2022/1/20 11:39
受賞作「塞王の楯」を手に記者会見に臨む今村翔吾さん=東京・帝国ホテル

 第166回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は砂川文次さん(31)の「ブラックボックス」(「群像」8月号)に、直木賞は本紙の連載小説を執筆している今村翔吾さん(37)の「塞王(さいおう)の楯(たて)」(集英社)と米沢穂信さん(43)の「黒牢城(こくろうじょう)」(KADOKAWA)に決まった。直木賞に2度目のノミネートとなった本県在住の柚月裕子さん(53)の「ミカエルの鼓動」は、受賞はならなかった。

 今村さんは2017年に新庄藩の火消しを主人公にした「火喰鳥(ひくいどり) 羽州ぼろ鳶(とび)組」でデビューした。現在、本紙で「茜唄」を連載している。受賞作は戦国時代の大津城の攻防戦を、石垣を造る石工集団と鉄砲鍛冶集団の対決に光を当てて描いた。

 直木賞選考委員の浅田次郎さんは「受賞した2作とも戦国時代の籠城戦を描いていたが、多くの委員から甲乙付けがたいという声が上がり、2作同時受賞となった」と総括。「今村さんは常に熱量が高く、体力と気力が充実した力強い小説だった。職人たちの戦という独創的なテーマも良かった」と語った。賞金は各100万円。贈呈式は2月下旬に東京都内で開く予定。

山形の方に「やったぞ」

 東京都内で記者会見した今村翔吾さんは、緊張した面持ちで登場した。憧れの賞に「まさか自分が泣くとは思わなかったが、連絡を受けた時は号泣してしまった」と明かし、「僕は池波正太郎先生の本から始まった。池波先生と同じ37歳で受賞でき、めちゃめちゃうれしかった。歴史小説にどっぷり浸かっていた少年がここまで来たかと思うと、感慨深い」と喜んだ。

 今村さんは京都府出身だが、デビュー作は新庄藩の火消しが題材。新庄市の新庄まつりに魅了され何度も本県を訪れ、同市の観光大使も務めている。「いろいろな人との縁が執筆の活力になっている。山形の人と出会わなかったら書けなかった一節もある。応援してくれる新庄、山形の方には『やったぞ』と伝えたい」と笑顔を見せた。

 廃業の危機にあった大阪の書店を引き継ぎ、「今は難しいが、この足で47都道府県を回ろうと思って車を買っていた。書店を応援するために何かしたい」との思いもある。「すごい賞だが、明日になったら過去。より良い作品はもちろん、自分の生き方として新しい夢や目標を常に持っていきたい。迷いながらも進み、とにかく面白い作品を届けていく」と意気込みを語った。

ゆかりの新庄、吉報に歓喜

JR新庄駅改札前に飾られた新庄まつりの豪華山車。直木賞を受賞した今村翔吾さんのデビュー作を題材にしている=新庄市

 新庄藩の火消しを題材にした「羽州ぼろ鳶(とび)組」で文壇デビューした今村翔吾さんは、新庄市の観光大使であり、同市を「第二の故郷」と呼ぶ。そんな今村さんを慕う仲間とファンクラブを作り、代表を務める市職員の渡辺安志さん(60)は吉報に接し「(今村)先生は『新庄の宝』」と感激しきりだった。

 今村さんは、大飢饉(ききん)で疲弊した領民を励ますため時の藩主が始めた「新庄まつり」の起源に深く感じ入っていたという。市内での講演や中高生向けの小説家養成講座の講師を快く引き受けるなど度々、新庄を訪れている。渡辺さんは「受賞を通して、子どもたちに夢を持つことの大切さをまた教えてくれた」と喜んだ。

 規模を縮小して開催した昨年の新庄まつりで、新庄藩火消しの勇姿を山車(やたい)で表現した上茶屋町若連の代表神藤直人さん(40)は「素晴らしい題材を歴史ある山車として制作でき、とてもうれしい。(受賞の)良い流れを新庄まつりにつなげていきたい」と期待した。その山車は現在、JR新庄駅改札前に展示されている。

 山尾順紀市長は「受賞の快挙は市民にとっても大変誇らしい。今村さんが日本の文学界において、今後ますます活躍されることを祈っている」とコメントした。

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