核融合エネの実用化へ一役 酒田で実験施設部材、量産へ

2021/12/4 08:26
核融合実験炉内の予想図(量子科学技術研究開発機構の資料より)

 高融点金属の精錬やダイヤモンド精密工具製造などのアライドマテリアル(東京都、山縣一夫社長)の酒田製作所で3日、核融合実験施設「ITER(イーター)」用のタングステンモノブロックの量産ライン披露式が行われた。未来のエネルギー源として注目される核融合の実用化に向けた実験施設について、重要部材を酒田市で生産することになる。

 ITERは核融合エネルギーの実用化に向け、フランスで建設が進む実験炉。日本や欧州、米国、ロシアなどでつくるITER機構が国際大型プロジェクトとして進めている。核融合の実用化では太陽が光や熱を生み出すのと同じ反応を人工的につくり出し、膨大なエネルギーを活用することを目指している。

 太陽では大量の水素が核融合反応を起こし、膨大な熱や光のエネルギーが発生している。人工的に起こすためには、水素の原子核と電子が超高温下でバラバラになって飛び回るプラズマ状態にし、この状態で原子核同士を衝突させる必要がある。この際に別の重い原子核に変わる反応が核融合だ。ITERでは真空にしたドーナツ型の容器内で高温状態をつくり、超伝導コイルによる強力な磁力でプラズマを閉じ込め、水素の核融合を発生させる。

披露式典のテープカット(アライドマテリアル提供)

 酒田製作所では、ドーナツ型容器の下部に設置される「ダイバータ」という装置の部材を量産する。核融合で発生するヘリウムや不純物粒子を排出する役割があり、容器内は1億度近くまで高温になるため、排出時でも2千度を超える高温にさらされる。この部材の性能が核融合炉の発電能力を決めるとされる。2千度は宇宙から大気圏突入時に受ける温度と同等だという。酒田製作所はアライドマテリアル富山製作所で作った、高熱に強いタングステンをブロック部材として精密加工・接合する作業を担う。日本では20万個を製作し、同社はこのうち13万個を受注している。

 アライドマテリアルは住友電気工業の子会社で、披露式典には同社の松本正義会長や発注者の量子科学技術研究開発機構の平野俊夫理事長、高橋はるみ文部科学政務官、丸山至酒田市長らが出席。山縣社長は「多くの方の協力で量産ラインを完成させ、稼働できるようになった。環境やエネルギーの課題に貢献できる製品を作っていく」とあいさつした。

 【ITER】 核融合反応の際に生じるエネルギーを将来、発電につなげられるかを研究する実験炉。日本、欧州連合(EU)、米国、ロシア、韓国、中国、インドが参加し、各国が担当の装置を開発して納入する他、経費を分担する。日本の分担率は約9%。2009年に建設を開始し、25年に完成予定。

 【核融合と核分裂】 原子炉ではウランなどの放射性物質の原子の核分裂でエネルギーを得るのに対し、核融合炉では海水から重水素、リチウムからトリチウムを作り、原子核同士をプラズマ状態で核融合させてエネルギーを得る。原子炉での核分裂は中性子が次の核分裂を起こし、反応が連鎖する。一方の核融合炉では反応が連鎖せず、重水素などの燃料は必要量をその都度補給するため、燃料を供給しなければ反応も止まる。高レベル放射性廃棄物が出ないことなどが利点で、安全性も高いとされる。

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