酒田・女子中学生自殺問題(1) 学校側と遺族、見解の相違

2021/11/25 12:20

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 酒田市内の中学校で今年2月に女子生徒が校舎から飛び降りて死亡してから、10カ月がたとうとしている。生前、女子生徒は嫌がらせを受けていたとされ、市教育委員会はいじめがあった可能性も視野に再び調査を始めた。遺族はこれまでの対応が不十分だとし、学校側とは見解の相違も生じている。ここまでの経緯をたどり、焦点を探る。

 女子生徒は2月12日午前8時前、校舎4階から落ち、亡くなった。現場の状況や遺書があったことなどから、県警は自殺を図ったと判断した。市教委や学校は女子生徒が生前、校内での嫌がらせ行為を相談していたことを重視。背景にいじめがある可能性が否定できないとして「いじめ重大事態」と位置付け、基本調査を開始した。

 関係者の話では、女子生徒は昨年9月30日~10月15日、靴箱に「死ね」「キモイ」と書かれた紙を4回程度入れられたという。学校では、6月と11月の年2回、定期的に生徒と保護者に、学校生活での悩みやいじめなどがないかのアンケートをしており、生徒には面談もある。女子生徒は昨年11月の調査で、靴箱に入れられた紙について担任に相談していた。

 学校は亡くなった直後から調査に着手。全生徒を対象にアンケートを行い情報を募った。女子生徒からの相談はあったものの、学校は今年3月時点で、「女子生徒が直接的な嫌がらせや攻撃を受けていた状況(=いじめ)は確認できなかった」とする基本調査の結果をまとめ、遺族に報告した。関係者によると、嫌がらせの紙は残っておらず、靴箱に入れられるなどの行為も女子生徒だけに限ったことだったのか、確認できなかったという。

 文部科学省が2017年にまとめた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」や背景調査の指針では、いじめが疑われる重大事態が発生した場合、初動対応としての基本調査後、外部の専門家などで構成する組織が詳細調査を全件で実施することが望ましいとしている。しかし、市教委は「遺族が望んでいない」として、有識者による常設組織「市いじめ問題対応委員会」での詳細調査を行わないことを決めた。

 ただ、ガイドラインや指針では、たとえ遺族が調査を望まなかったとしても、いじめの可能性が排除できない重大事態では、詳細調査の実施を改めて提案するよう明記。詳細調査を見送った場合も、基本調査で得られた資料を精査し、検証することを促している。

 この点を巡り、学校側と遺族との間に見解の相違が生じている。いじめの有無が確認されなかったとする3月の調査以降、学校側は「遺族の意向」として調査を終結させた。一方の遺族は、娘の死亡後、ずっと対応に当たっていた校長が定年を迎えるなど、年度末の人事異動を考慮し、「いったんの中間報告として、調査結果をまとめることに同意したに過ぎず、調査は継続されるものだと考えていた」と主張する。

 学校側が女子生徒が自殺したことを公にしたのは、9月に開かれた保護者会の場だった。女子生徒に関するアンケートの取り扱いで問題があったことなども明らかにされ、止まっていた調査が再び動きだすことになる。

◇ガイドライン「学校の設置者及び学校の基本的姿勢」の抜粋

 被害児童生徒・保護者が詳細な調査や事案の公表を望まない場合であっても、学校の設置者及び学校が可能な限り自らの対応を振り返り、検証することは必要。それが再発防止につながり、新たな事実を明らかにする可能性もある。決して、被害児童生徒・保護者が望まないことを理由に自らの対応を検証することを怠ってはならない。

【いじめの重大事態の調査に関するガイドライン】2013年にいじめ防止対策推進法が施行。学校の設置者または学校は、いじめが関係する重大事態に対処し、速やかに設置者や学校の下に組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法で事実関係を明確にする調査を行うとされた。しかし、指針が策定された後も、法や基本方針などに基づく対応を行わず、児童生徒に深刻な被害を与えたり、保護者に不信感を与えたりする事案が発生。こうした現状、課題を受けガイドラインが策定された。

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