2021衆院選・コロナ下、託す思い[5] 広がる新しい働き方

2021/10/25 12:44
スタジオ八百萬の山田茂義代表と談笑する升屋豊久さん(左)。奥のモニターは、常時接続している県内のコワーキングスペースの様子を映している=米沢市

 10月中旬、穏やかな日差しが大蔵村の肘折温泉街に注ぐ。小道には浴衣姿でそぞろ歩く高齢者の姿がぽつりぽつり。景観に溶け込む若松屋村井六助は老舗旅館の一つだが、新たなサービスとして「ワーケーション」向けの1室を置く。

■ワーケーション

 旅先でも仕事がしたいという常連の声に応じ、有線LANケーブルを引き、テーブルと椅子を置いた。「宣伝できるほどのものじゃない」と専務の村井美一さん(52)。それでも「『仕事がはかどる』と言ってもらえた」と利用客の反応に可能性を見いだす。

 都会の慌ただしさと縁遠い、地方の奥まった温泉街で仕事ができる。10日間程度の滞在でも、湯治文化が残る肘折だからこそ毎日飽きさせない食事や、のんびり散策できる空間を提供できるという。

 岸田文雄首相はデジタル技術を生かして都市と地方の格差を解消し地方移住を促す「デジタル田園都市国家構想」を掲げる。新型コロナウイルスの影響でワーケーションにも注目が集まるが、村井さんは「中小企業の社員は難しいだろう。大企業を中心とした世の中の動き次第」とし、民間を動かす政策に期待した。

■共同オフィス

 新しい働き方を促す一つのツールとして、共同オフィス「コワーキングスペース」の設置が県内でも進んでいる。中には移住を後押しした例もある。

 米沢市の「スタジオ八百萬」(山田茂義代表)でパソコンと向き合う升屋豊久さん(28)は、共同経営者2人と最新の金融情報を発信するウェブサイトを運営している。他の2人は大阪と名古屋に住み、升屋さんは今年6月に大阪から米沢に移住。「同じ場所にいて自分の成長があるのか」。新天地に向かわせたのにはこうした危機感があった。

 30歳を前に自分と同じように考える“移住予備軍”は多いと感じる。しかし、ネックとなるのは仕事で、自身にとってはコワーキングスペースの存在は大きかった。今は新しい出会いに刺激を受ける日々だ。雪に対する若干の不安はあるが、仕事、生活で不便な点はほぼない。「骨を埋める」ことまでは考えていないが、しばらくは米沢の生活を満喫するつもりだ。

■テレワーク

 定住だけが地域活性化につながるわけではない。県内ではテレワークを活用することで県外在住者の力を生かし、ステップアップを目指す企業もある。

 酒田市の老舗日本酒メーカー「楯の川酒造」(佐藤淳平社長)は約10年前にテレワークを導入し、現在は従業員約60人のうち12人が首都圏や京都、沖縄県石垣島に在住し、海外営業や経営企画、広報・マーケティングなどを担当している。

 きっかけは東京で営業担当社員を採用したことだった。当初は東京事務所を開設したが、酒販店訪問など外出先での仕事が多かったため閉鎖。各自の自宅から営業先を回るようにした経緯がある。今は場所に縛られない働き方が多彩な人材の採用につながっている。

 「優秀な人材に力を発揮してもらうことで世界と互角に戦える武器を得た」と佐藤社長(42)。重要なのは「地方の企業や個人がデジタル技術をどう捉え、活用していくかだ」とし、政府には各種チャレンジを後押しするような施策や規制緩和を望んでいる。

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