2021衆院選・コロナ下、託す思い[3] 農業、のしかかる課題

2021/10/23 16:51
コロナ禍による米価下落や、霜害などで生産現場では山積する課題がより浮き彫りになっている=酒田市

 本県の基盤産業・農林水産業の現場も悲鳴を上げている。新型コロナウイルスの感染拡大は外食産業を直撃し、供給地も苦しめている。自然相手の仕事は、需給バランスや異常気象の影響も受けやすい。特に国の礎とされる農業では、常に山積している課題がコロナ禍でより浮き彫りになっている。

 前年比2300円減―。今年9月、県産ブランド米「雪若丸」のJAの概算金は大幅に下落した。主力品種「はえぬき」も同水準。近年、JAの系統出荷だけでなく独自ルートの販売も増えたが、概算金は流通に影響を及ぼす。今秋は作柄も良く、拍車を掛けた。「ここのところ豊作を心から喜べない」と、庄内平野の生産者はつぶやく。

下がる米価

 酒田市の専業農家佐藤正信さん(65)は自前でもみすりや選別の機械を導入し、設備投資をしてきた。系統出荷が中心。高齢化で手放される農地も請け負い、規模も広げた。米価下落は大きな痛手だ。「日本の中でなぜ生産者同士が戦わなければならないのか。国の責任でコメの量を減らすべきだ」と指摘する。国は自由なコメ作りを推進しようと、2017年に約半世紀続いた生産調整(減反)を廃止。「作り過ぎが起きるのではないか」と、当時から懸念された状況が起きている。

 少子高齢化や食生活の多様化でコメの消費は毎年10万トン減退。そこにコロナ禍の需要減が追い打ちを掛けた。各政党は過剰在庫の市場隔離や戸別補償制度などの必要性を主張する。「ばらまきと急場しのぎ。来年や再来年も見越した支援が必要だ」と佐藤さん。生産基盤維持を含めたコメ政策をもっと中心的な議題にしなければ課題は解決しないと指摘する。

温暖化の影

 コロナ禍の中、本県園芸農業の得意分野・果樹の生産現場では今春の霜害の影響も引きずっている。「最近、佐藤錦の成りが悪くなった。気温上昇のせいかもしれない」。サクランボの主産地・寒河江市などで約100アールの園地を営む後藤一浩さん(61)は危機感を口にする。霜害は温暖化で開花が早くなったことが影響しているとの見方があり、後藤さんも同様に感じる。

 後継者不足も深刻だ。サクランボの価格が大きく上がらない中、雨よけハウスなどの設備費用は上がり、収益確保は簡単ではない。高齢化は進み、主産地でも生産をやめた農地は目に付く。「国や国会議員には使いやすい補助金や生産者の収益を気に掛けてほしい」と語った。

手薄な助成

 本県が誇る米沢牛などの畜産は昨年、コロナ禍で枝肉価格が4割下落するなどした。今は回復基調にあるが安心はできない。飯豊町で約1200頭を肥育する田中畜産常務の田中清人さん(34)は「昨年4月がどん底だった」と振り返る。他産地より長期間肥育する米沢牛は飼料代などがかかり、赤字状態となっていた。外食需要激減の影響も受けた。まだ完全に回復しているわけではない。そもそも生き物相手の現場では、不安定要素が大きい。「飲食店に比べると生産者への助成は手薄に感じる。規模の大小にかかわらず、農家にしっかり届く支援が求められている」と話す。

 国の大本である農業。新興国の需要増への対応や食料安全保障の観点からも、一次産業の施策は本来もっと中心にあるべきだ―。生産現場は訴えている。

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]