2021衆院選・コロナ下、託す思い[1] 大打撃の飲食・観光業界

2021/10/21 11:49
「需要喚起に力を入れてほしい」と語る山形駅前はながさ通り飲食店組合の酒井貞昭理事長。飲食業や観光業からは感染予防と経済再生の両立を求める声が上がる=山形市・酒菜一

 山形一の繁華街・JR山形駅前は、新型コロナウイルスの県の感染拡大防止特別集中期間が終了し、国内の緊急事態宣言が解除された後も人通りは少ない。

■悲鳴

 今年2月、ダイニングバーが約22年間の営業に幕を下ろした。コロナ禍前は創作料理で人気を集め、結婚式の2次会でもにぎわった。「店を残したかったが、どうしようもなかった…」。運営会社の男性ディレクター(55)はため息をつく。

 結婚披露宴はなくなり、一般の客足も遠のいた。事業継続には別の2店舗に経営資源を集中するしかなかった。男性は「感染対策をしてお客さんを待っているが、売り上げはコロナ前の2~3割程度。年末年始に向けて客足が戻ることが一番だ」と通りに目をやった。

 約210軒を数えた山形駅前はながさ通り飲食店組合の加盟店は、閉店や廃業で9月までに178軒まで減った。酒井貞昭理事長は「とにかく需要喚起が必要だ」と訴える。

 「飲食や会食がいまだに悪者にされている」「もうギリギリだ」―。組合員からの“悲鳴”は日に日に大きくなっている。酒井理事長は、再開が検討されている「Go To トラベル」など、国の経済対策に強い期待感を示し、県に対してもコロナ対策認証店への「安全宣言」など明確な支援を求める。

 来春にコロナ関連融資の返済が始まる店も多い。「客が戻らなければ、返済どころではない。まずは行政のトップが率先して飲食業界を後押ししてほしい」

■活気

 飲食業界と同様に大打撃を受けた観光業界は、少しずつ活気を取り戻しているようだ。尾花沢市の銀山温泉組合の脇本英治組合長(42)が経営する古山閣。今年9月までの売り上げはコロナ前の5~7割で推移していたが、緊急事態宣言が明けた10月以降は客足がぐっと増え、予約は11月半ばまでほぼ埋まった。

 脇本組合長は客を迎え入れる温泉街側の環境整備の必要性を感じている。「いい思い出を持ち帰ってもらい、かつ地域経済を潤すためにはハード、ソフト両面の支援が不可欠。政府、行政には要望に耳を傾けてほしい」と話す。

 天童温泉も宿の明かりがわずかに増えた。「じわりという現状。コロナ前まで一気に戻る雰囲気はない」と話すのは栄屋ホテルの山口宰社長(43)。首都圏からの客足はなく、ニュースで見る人流との開きを感じている。

 GoToトラベルには助けられた。「宿泊者数は多くなかったが、高単価のプランが伸びて事業の運転はできた」。突然の停止後は客が1人やゼロの日々。「感染状況から仕方なかった」と理解するも「会社をつぶさないことだけを考えてきた。雇用調整助成金など(財政支援)で何とかつないだ」と振り返る。

■緩和

 国は行動制限緩和に向け、ワクチン接種済みや陰性証明を使った宿泊旅行の実証実験を始めた。山口社長ら若手経営者の多い同温泉協同組合は「緊急支援策」「観光喚起策」「感染対策支援」を求めながら、自らも回復を模索する。「安心、安全でないと旅は難しいため、自分たちも万全の体制を整える努力をしている。ワクチン証明などの前に、まず行動制限を緩和して長すぎる自粛ムードを和らげてほしい」と願っている。

      ◇

 新型コロナウイルス下での、初の大型国政選挙となる衆院選が19日に公示された。県内では景気回復と生活向上の実感は乏しく、さらに新型コロナの感染拡大が飲食・観光業だけでなく、農業など幅広い分野に暗い影を落としている。一方、世界的危機でテレワークが加速するなど、暮らし方、働き方を再考する大きな転換期を迎えている。山形の有権者は政権選択の短期決戦に何を思うのか。それぞれの現場の実情に迫る。

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