移住10年、喜びも苦労も 川西町の協力隊1期生・塗さん

2021/10/20 12:25
埼玉県から置賜地域に移住して10年間の思いをラジオで発信している塗貴旭さん=米沢市

 川西町の地域おこし協力隊1期生として2011年に埼玉県から置賜地域に移住した塗貴旭(ぬりたかあき)さん(38)が、移住から10年の経験をコミュニティラジオを通じて発信している。語っているのは出会った人への感謝と、苦労話を含む移住者としての本音だ。「移住者がどういった経験をするのか、生の声を伝えたい」。自身の10年間を見つめ直しながら、マイクに向かっている。

「本当の思い」ラジオで発信

 塗さんの出身地は埼玉県南部の川口市。東京に隣接する人口約60万人の大都市だ。縁もゆかりもない川西町への移住を決めたのは「何かを乗り越えたい」という思いから。「田舎に来ればのんびり暮らせる」という考えもあった。

 実際は甘くはなかった。「1人でも何とかなる」と思っていたが、人と関わらないと何もできない。人付き合いの距離感の近さに戸惑い、移住3カ月で1度“脱走”を企てた。自転車で新潟を目指して走ったが、途中で倒れてしまった。その時、隣人が車で迎えに来てくれた。「自分のためにこんなにしてくれる」。心の中に、新しい何かが目覚めた瞬間だった。

 協力隊としてさまざまな地域活動に取り組む中で、町民は自分のことを気持ちよく迎えてくれた。ただ、当初は「興味本位でからかわれているのではないか」と思ったこともあった。一方、自分が心から素晴らしいと思って褒めたのに、相手の反応にもどかしい思いをすることもあった。「どうせ田舎で大したものではない」。卑下する言葉を聞くことは少なくなかった。

 3年間の任期を終えた後は、米沢市の放送番組制作会社に入社し、現在は同市在住。東南置賜2市2町をエリアとする「エフエムNCV」のスタッフになった。置賜地域への移住から10年となった今夏、一つの区切りとして自身が制作、出演する番組を企画した。

 番組名は「Over the Border」。さまざまな境界を越えてきた自分自身に重ねた。自身が置賜で出会った人をゲストに招いた対談形式で、8月に第1回を放送した。今月の第2回では、同世代の友人2人と「人付き合い」をテーマに語り合った。

 移住自体の可能性や自分が移住したことの意味など、自分自身でも答えは出ていない。だが、「都会では味わえない経験ができている」ことは間違いない。移住後に身に付けた放送のスキルを駆使しながら、これからも「本当の思い」を発信し続けるつもりだ。

 番組は2カ月に1回程度の放送を予定。過去放送分はホームページから確認できる。

【関連リンク】

エフエムNCV 83.4MHz おきたまGO

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]