香港の未来へ、歴史記録 反政府デモ撮影・山形国際ドキュメンタリー映画祭

2021/10/12 08:49
「理大囲城」の一場面

 オンラインで開催中の山形国際ドキュメンタリー映画祭には、政治的な混乱が続く地域から寄せられた作品もある。香港からは、2019年の反政府デモの現場を捉えた「理大囲城」が出品された。ただ制作者の安全を守るため、監督らは実名を伏せ「香港ドキュメンタリー映画工作者」と表記、10日の上映後のオンラインインタビューでは顔も隠された。彼らは圧力の中でこそ歴史を記録し、創造することの重要性を、身をもって訴える。

 作品は複数人の作家による集団が監督を務める。逃亡犯条例改正を発端に反対運動が激化した19年11月、警察に包囲され香港理工大に籠城を余儀なくされたデモ隊の様子を内部から撮影した。映る学生たちは安全上の理由で防護マスクを着け、作品内では顔にはモザイク処理も。攻撃的な言動の裏で、若者たちは「本当は怖くて仕方がない」と不安を漏らす。警察に追い詰められ憔悴(しょうすい)していく姿は、香港を覆う葛藤や不条理をあらわにする。

 監督らが編集でこだわったのは「自分たちが見たことだけにフォーカスすること」。また、メディア報道のように激しい衝突の場面や、英雄化された一部の若者の声だけを切り取るのではなく、弱さやその根底の感情も含め多面的に事実を見せることだったという。

 製作に当たった彼らは「デモ隊の人間的な側面を見せることで、われわれと同じ普通の人間がその場にいるということを見せたかった。そうすることで、何が起こり、何が大切かを考え、よりよい未来につながると思った」と話した。

 香港の状況は雨傘運動の頃より深刻さを増す。昨年は香港国家安全維持法が施行され、今年8月には映画の検閲を強化する条例改正案が発表された。言論や表現の自由に対する統制は厳しくなっている。6月には中国に批判的な香港紙「蘋果日報(リンゴ日報)」が廃刊に追い込まれた。現在の香港は「メディアに対するコントロールが大きくなり、一般人にとっても公共の場で話す恐怖は大きい」状況だという。大学ではデモに関する資料が排除されるなど「政府があらゆる歴史を書き換えようとしている」と懸念を示す。

 一方、検閲や統制が強化される中でこそ歴史を物語る資料を残し、創造することの重要性を感じている。「歴史を見れば分かるように、戦いは長い旅路になる。それぞれが自分のやり方で戦い続けるのが大事。私たちはそのために映像を作り続ける」と語った。

山形国際ドキュメンタリー映画祭

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