小選挙区制導入25年~政治はいま(上) 有権者と政治家、向き合う姿に変化

2021/9/16 15:14

[PR]
 有権者の政治離れが叫ばれて久しい。70%ほどで推移していた国政選挙の全国投票率は近年50%前後に落ち込み、地方議員の担い手不足は深刻化している。あす17日告示の自民党総裁選を経て実施される衆院選は、1996年の小選挙区制導入から今年で25年を迎える。この間、政治家、有権者は政治とどう向き合ってきたのか。県政界をけん引した4氏を通じ、変容といまの姿を探る。

     ◇ 

 県知事を3期経験した高橋和雄(91)=山形市、県議を経て現東根市長(6期目)の土田正剛(77)=東根市、県議を最多タイの10期務めた元県議の後藤源(82)=米沢市、旧藤島町の町議と町長、そして県議の各立場で政治に携わった阿部昇司(70)=鶴岡市=の4氏に話を聞いた。

 一つの選挙区から複数が選出された中選挙区時代から、1選挙区で1人を選ぶ小選挙区になった。これに伴い、候補者や政治家が有権者と向き合う姿が変わってきたと各氏は見ている。

 高橋氏は、中選挙区は同じ政党内で政策や主義主張に多様性があったと振り返る。社会の変化に反応し、絶えず自身の感覚を向ける小選挙区の方が民主主義にとってより良い制度だとしつつ「2大政党制を目指した小選挙区の理念が停滞している。人口減少や地方の衰退など課題が山積しているのに、政策論争が進んでいない」。

 近年の国政選挙で浮上する争点の中に、国家論や国土軸などの大局観が薄れているからではないかと捉える。「政策が出てこなければ、世の中が変わらない。2大政党制につながる軸が見えなければ、有権者の思考が育たない」

 自らを「中選挙区論者」と形容する土田氏は、小選挙区では当たり障りのない主張になりがちだと指摘する。例えば、同じ農業政策でも果樹、稲作など地域性がある。小選挙区制は、課題の一部を切り捨てると有権者離れにつながるとの考えになるといい「そうなると、バランスを取ろうとしてはっきり意見を言わなくなる。その姿は有権者にとって物足りなさに映る」と解説する。

 「派閥政治」に関しては、批判されるような密室政治だけではなく、利点もあるとした上で「定数が5であれば、5派閥が生まれるように、議論が活発化し、政治にダイナミックさを与えていた」と語る。党公認問題と絡み、小選挙区は世代交代を減速させると付け加える。

 中選挙区はスペシャリストを育み、小選挙区はオールラウンダーを生む―とひもとくのは阿部氏。小選挙区では抱える全ての課題と向き合う必要があるため、幅広い知見と政策を政治家は用意しなければならないと強調する。「そうならざるを得ないのだが、オールラウンダーは政治経験者にとっても、一般有権者にとっても、満たされないものに感じてしまう」

 豊富な政治経験から「有権者は政治家と同じ立ち位置で政治を見詰めるようになった」と実感するという。そうした視点がなければ、有権者の期待に応えられなくなっているとし、実現していない現状が、全国的な低投票率となって現れていると説く。

 後藤氏は、同じ政党内で議席を争った中選挙区と違い、政党の政策や主義主張を有権者に届けることができることを小選挙区の利点に挙げる。ただ、有権者数で区割りされ、地域性や文化的な側面が脇に追いやられたと指摘。参院選では県境をまたいだ「鳥取・島根」「徳島・高知」の2合区が取り入れられ、地域課題を論じ、民意をくみ取る政治が遠のいているのではないか、との懸念を抱く。

 さらに、直接対話で政治家と有権者がつながっていた時代から、SNS(会員制交流サイト)に代表されるネットの台頭で熱が伝わる関係が冷え込みつつあるとし、改憲を含めて選挙制度の在り方を論じる時期に差し掛かっていると捉えている。

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]