配分格差~県内自治体のワクチンの現実(下) 県の広域調整、もっと

2021/9/16 14:38
新型コロナウイルスワクチン接種で、次々と入る予約申し込みに対応するコールセンター=山形市保健所

 市町村の中では国の「ワクチン接種記録システム(VRS)」を活用し、独自に県内全市町村の想定ワクチン供給量を推計している所もある。推計量を全人口で割ると、中には120%台の町村があれば、60%台の市もあるなど格差は歴然としていた。分析した内陸地方の市担当者はつぶやいた。「自治体間調整がもっと円滑にできないだろうか」

 山形新聞は市町村に、現時点でワクチンの余剰分がないか聞き取りした。複数の市町村で回答があり、全対象者への接種のめどが立った町村では「余剰分が生じている」と回答した。

 使い道は「集団接種を受けられなかった希望者」や「再度、希望調査した上、『打ちたい』と答えた人に接種する分として確保する」など、あくまで住民優先が基本方針。一方で、ワクチン保存期間の都合上、不足している所へ回す考えを示す市町村もあった。

長距離移送に課題

 真室川町は現時点で接種対象者の95%近い分量を確保しており「ほかに融通することを検討している」。大江町も「余りはわずかにある。月末までに552回分配分する」との意向だった。余剰分のない飯豊町は融通自体に異論はないものの、自治体を越えた長距離移送に「技術的に多くの困難があるのでは」と課題を指摘した。

 各市町村に配分されるワクチンは原則、箱単位(195本入り)で来るので、規模が小さい町村では使い切れない分が生じやすい。そこで、中山町は県に対し広域的な対応への調整を求めている。同町の担当者は中小規模の自治体共通の「悩みでは」と推察した上で「余りをなくすため箱単位でなく、必要な分だけ配分されるよう、交通整理してほしい」と提案する。

 中山町のような声は複数あり「県が自治体間に入って余剰ワクチンの管理、融通をしてもらうとスムーズではないか」と訴える。理由について寒河江市は「他の自治体の状況が分からないから」と回答し、上山市も「ほかの自治体の在庫が分からない状況で、直接、融通を要請するのは難しい」を理由に挙げる。

 国からのワクチン配分の調整に対しても「県に総合的な判断をしてほしい」とする自治体があった。具体的には供給量不足ばかりを重視するのではなく、大規模接種会場を既に設け、医師、看護師も確保しているなど「迅速に接種できる体制が整っているかどうかも勘案してほしい」というものだ。

 情報収集や事務処理能力に関わる自治体規模の差を補うため、もっと積極的な県の介入を期待する声も大きい。内陸地方にある市の担当者は「早い段階から国からのワクチン獲得や情報収集、現在行っているような市町村への配分で、国と市町村の間に入ってほしかった」と指摘する。

 各市町村の声に対する県の反応はこうだ。高齢者向けの接種を進めていた際、各市町村への声掛け、同意を得た上で比較的足りていない市町村に、足りている市町村の分を配分するケースは複数回あったという。

「一時的な穴埋め」

 今後は町村レベルで確保量に余裕が出てきた自治体もあり、「周辺の足りていない自治体に配分する状況が増えてきそう」と展望する。一方で、余剰分はいずれも少量の場合が多く「あくまでも『一時的な穴埋め』であり、格差を是正できるほどではない」と理解を求めた。

 自治体主導の接種に加え、職域接種で混乱が生じたことも無視できない。できるだけ早くワクチン接種を加速させたい国の意向で職域接種の流れを急きょ打ち出したが、国側の準備不足は明らかだった。申し込みが殺到し、全国的なワクチン不足を引き起こす結果となった。国の対応の遅れも相まって、県経営者協会、山形経済同友会、山形商工会議所の経済3団体は割り当てられるワクチンの見通しが立たないなどの理由で断念せざるを得なかった。

 感染力が高いデルタ株の流行でワクチンの3回目接種の必要性が議論される中、課題は山積している。自治体、職域ともに体制、仕組みの見直しが急務となっている。

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