配分格差~県内自治体のワクチンの現実(中) 基本枠と調整枠

2021/9/15 13:52
新型コロナウイルスワクチンの接種。市町村によって基本枠の供給量に偏在が生じた=5月、酒田市役所

 「実情に応じた適正な割り当てを県に強く要求していく」。先月26日に開かれた丸山至酒田市長の定例記者会見。市が求めるワクチン量に対して大幅に下回る配分が続いたことに危機感をあらわにした。

 8月末時点でほかの市町村では基本枠分(対象年齢人口の8割)の配分に達した自治体も少なくない。同市の担当者は基本枠配分の遅れに対し、「県が配分し、自治体ごとのばらつきを解消するとの厚生労働省の意向が反映されていない。このままでは最低限の8割接種がいつまでたっても実現しない」と話した。

 東根市も8月末時点の独自推計で供給率が8割に達していなかったという。担当者は「多くの自治体に比べて全人口に占める若年層の割合が大きい本市の人口構造で、供給量が間に合っていなかった」と説明する。鶴岡市は他の自治体で接種が進む中、担当者は「なんでここ(鶴岡市)には届かないのかという気持ちだった」と吐露する。同市は不透明な供給状況をにらみ、8月の集団接種を見合わせ、年代などで区切った段階的な接種を慎重に進めた。

■VRSの入力効果

 比較的、人口規模が大きい自治体で基本枠に達していない傾向にある中、県内最多の山形市は見込み値ながら「既に達した」という。迅速な配分を得るために力を入れたのは届いたワクチンに対して現状でどのぐらい接種が進んでいるかを、ほぼリアルタイムで「見える化」したことだ。

 6月に河野太郎行政改革担当相が国の「ワクチン接種記録システム(VRS)」上の接種記録を供給量に反映させる方針を表明したことにすぐ反応した。その日接種した分を翌日以降に持ち越さず、すべて当日中に入力した。

 きめ細かいVRSの入力効果は大きかった。迅速な入力考慮配分として、追加分の23箱(約1万3450人分)が配分された。いち早く国が募集した集団接種に申し込んだ効果も大きく64箱を得た。ここまでは順調だった。「努力で上積みを果たした」と振り返る。だが…。

■軋轢生んでしまう

 ここに来て若者層の接種希望者が当初の予想を上回ることと、今後の配分見通しを照らし合わせると焦りを感じているという。一時期、若者はワクチン接種に慎重との観測が流れていたが、デルタ株感染者の多くが65歳未満だった現実を突き付けられ、意識に変化が生じたと担当者は感じる。

 13日に県が各市町村に示した10月後半の調整枠配分。山形市によると、本県割当総量46箱(約2万6910人分)のうち県から2箱配分された。「とても足りない」と市担当者は表情をこわばらせた。そして、こう訴えた。「調整枠の配分に当たり、国は都道府県が実情に応じて配分量を調整できるとしているが、基本枠分を超える追加の配分も趣旨に含んでいるはず。8割を超える分の配分にも、もう少し多く配慮してほしい」と。基本枠分の配分が遅れていた酒田、鶴岡、東根の3市は最新の調整枠で8割台に達する見込みという。

 全国的に需要が高まっているワクチンを少しでも多く獲得するため、自治体の個別努力の余地があるのは仕方のない面はあろう。だが、工夫や意欲などが加味される予算とは違い、直接、命に関わるワクチンで市町村ごとにあまりに大きな偏在が生じるのはどうなのか。国の仕組みそのものが混乱を生じさせている点は否めない。「このままでは自治体間の軋轢(あつれき)を生む。将来を見据え、仕組みを大きく見直す必要がある」。一部自治体の担当者はつぶやいた。

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