新型コロナ、後遺障害の実態判明 長引く嗅覚・味覚異常

2021/8/2 08:41
「嗅覚・味覚が戻らなければ、早期に受診・治療を検討してほしい」と話す欠畑誠治教授=山形市・山形大医学部

 新型コロナウイルス感染者の中等症以下の6割が嗅覚・味覚に異常を感じ、嗅覚障害の4割が発症から1カ月後も症状が続いている―。日本耳鼻咽喉科頭頸(とうけい)部外科学会と金沢医科大による研究班の調査で嗅覚・味覚に関する後遺障害の実態が明らかになった。同学会理事で山形大医学部の欠畑(かけはた)誠治教授(耳鼻咽喉・頭頸部外科学)はQOL(生活の質)への影響に限らず、危険察知力の低下を招くとし「後遺障害に苦しむ人は早期に受診、治療してほしい」と求めている。

 研究班は今年2~5月に東京、大阪、愛知、千葉、石川の各都府県の病院、宿泊療養施設を対象に調査した。無症状から酸素投与を要する中等症までの陽性者251人がアンケートに回答し、その結果が7月に公表となった。

 入院、療養中に味覚・嗅覚両方の障害を自覚したのは37%に上り、嗅覚障害のみは20%、味覚障害のみが4%と全体の約6割が嗅覚・味覚で何らかの異常を実感した。両障害とも自覚がなかったのは39%だった。若年層ほど発症率が高い傾向にあったという。

 さらに発症から1カ月後も症状が継続しているのは嗅覚障害で40%、味覚障害が16%だった。特に嗅覚障害は全体の4割が1カ月後も異常を感じており、いったん感染すると症状が長引く割合が高いことが分かった。味覚障害の割合は低く出ているが、嗅覚障害に伴う風味障害が多数を占めると推測した。

 嗅覚・味覚が戻らなければ、どんな影響を及ぼすのか。欠畑氏は、風味を感じないため飲食の楽しさを失うなどQOLが著しく低下する一方、ガス漏れや火の気といった異常への危険察知のほか、食べ物が腐ったことにも気付けない事態が生じることを指摘する。今回の調査結果を踏まえて「新型コロナに感染し陰性化した後も嗅覚、味覚で後遺障害に苦しむ割合は高い。嗅覚、味覚は人間が生きていく上で非常に大切だけに重大な問題だ」と強調している。

 一方、日本鼻科学会は嗅覚の回復を目指し、嗅覚刺激療法の研究を進めている。自身の記憶にある刺激の強い香りを選択し、10秒嗅いで10秒休憩を繰り返す。実物や風味を再現したオイルなどを使用し、朝食前と就寝前にそれぞれ5分間ずつ行う。同学会は日本人向けとして湿布やココナツ、バニラなどの香りを例示している。欠畑氏は「においは記憶と深く結び付く。ウイルスの影響を受けた嗅神経の障害は普通の風邪でも起こり得るが、新型コロナはその割合が非常に高い」と懸念を示している。

 全国的な傾向から見て、後遺障害に苦しむ割合は県内でも一定程度いると推察される。欠畑氏は「陰性化した後も嗅覚・味覚で後遺障害が長く続いていたら、まずは耳鼻咽喉科を早めに受診し、適切な治療を開始してほしい。嗅神経を刺激するトレーニングを導入することも一つの手段として重要だ」と語る。

 欠畑氏は2020年に山新3P賞(平和賞)を受賞している。

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