悪質な木札貼り付け、置賜の寺社で被害相次ぐ くぎや接着剤で固定、建物損傷

2021/6/30 12:35
くぎや接着剤で貼り付けた状態で見つかった木札=飯豊町・天養寺観音堂

 飯豊町中の県指定文化財「天養寺観音堂」など置賜地方の複数の寺社で、千社札とみられる木札をくぎで打ち付けたり、強力な接着剤で貼り付けたりし、貴重な建物を傷付ける悪質な行為が確認されている。こうした行為は近年、全国の寺社で問題化。置賜三十三観音の4番札所でもある同観音堂の長岡英雄堂守は、札所会事務局を通じて各寺社に注意を呼び掛けている。

 天養寺観音堂は室町時代の15世紀ごろに建てられた同町内最古の建造物。今月7日、堂内の柱や梁(はり)、壁などに悪質な木札が相次いで発見された。粘着力の強い接着剤で貼り付けられた木札は、建材の表面も一緒に剥がれてしまうほど。数本のくぎで固定されたものは建物に穴を開けている。

 町教育委員会が調べたところ、町内の少なくとも7カ所の寺社で同様の悪質な貼り付けが確認された。残された木札を手掛かりに、貼り付けた人物が所属するとみられる関東地方の納札(のうさつ)活動団体を突き止め、代表者に被害状況を説明し、事実確認を要請している。

 千社札をくぎや剥がせないような接着剤を使って貼り付ける行為は、こうした納札活動団体も禁止を呼び掛けているが、一部の巡礼者は剥がしにくい場所を選び、頑丈に固定しているようだ。異なる寺社で同一の札も確認されている。

天養寺観音堂内の柱や梁に貼り付けられた千社札の中には、木札も見られる

 建物を傷付ける悪質な行為は国指定文化財の場合、文化財保護法違反(懲役5年以下、100万円以下の罰金など)に問われる。しかし、国重文の深山観音堂(白鷹町)などでは同法の適用を回避するためか、境内にある手水場の柱といった文化財でない建造物への巧妙な貼り付けが散見されている。一方、天養寺観音堂など県指定文化財は同法の対象外だが、刑法の建造物損壊罪(懲役5年以下)に問われる可能性がある。

 長岡堂守は「参拝してもらうのはありがたいが、くぎ打ちや、剥がれない接着剤はやり過ぎだ」と憤る。今後は建物への貼り付け禁止や、札を貼る専用台の設置を検討している。「何もしないと減らない。普段は無人なので監視カメラ設置も検討課題だ」と嘆く。

千社札、全国的な問題―効果的対策なく寺社困惑

 置賜三十三観音の札所ではほかにも、木札の悪質な貼り付け行為が見つかっている。

 12番札所の「赤湯聖観音東正寺」(南陽市)では観音堂に同様に木札が貼られたほか、東正寺本堂内にも断りなく紙札を貼られたという。本間宗一住職は「自由に札を貼ることを許容してきた管理の不備がある。それぞれの思いで巡礼する人を一方的に責めるのではなく、納札活動団体などとお互いが納得するルールを話し合いたい」と語る。

 同札所会事務局を務める21番札所「小野川観音宝珠寺」(米沢市)の関谷寛明住職は「千社札は全国の寺社が抱える問題」と指摘する。その上で「県内で伝統的に行われてきた観音巡礼の納札とは全く別で、剥がされないよう特殊なのりなどで貼る千社札は迷惑行為と認識している」と話す。対策については「乾く前にすぐに剥がしたり、不審者がいないか見守りを強化したりするしかなく、効果的な対策が見当たらないのが現状だ」と困惑している。

千社札(せんじゃふだ) 神社仏閣に参拝した人が記念に貼る風習のある札。多くは紙製で個人名や団体名、あだ名や屋号などが印字されている。管理者は一定期間が経過すると、剥がしておたき上げなどの供養を行う。

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