世界で戦う力、最上川で磨く 「最高の環境」求め移住、カヌー・福士さん

2021/6/13 11:43
福士昴さん

 しぶきが上がる急流で小さなカヌーがくるっと回る。朝日町の最上川を拠点にカヌーフリースタイルに取り組む県職員の福士昴(すばる)さん(29)=米沢市中田町。大阪府出身で、同競技の日本選手権では連覇もしている実力者は、練習環境を求めて本県に移り住んだ。世界での活躍と競技人口の拡大を目指し、荒波に挑む。

 福士さんは進学先の酪農学園大(北海道江別市)で同競技を知った。流れが激しい川を舞台に、波立つ場所やホールと呼ばれる水が落ち込む急流地点で、小回りが利く2メートル弱のカヌーを自在に操る。激流の中でターンや宙返りを決めるなど、各種の技の難易度や完成度を競い合う。

 獣医師を目指していた大学6年時、初めて日本選手権に出場した。毎年会場となっているのは、朝日町玉ノ井地区の最上川カヌーランドに位置する「たんの瀬」と呼ばれる急流。全国屈指の好ポイントだ。福士さんは、この大会で2位に輝いた。

 就職先を探す際に優先したのはカヌーの環境で、迷わず本県を選んだ。16年春、獣医師として県職員となり、庄内町にある庄内食肉衛生検査所を経て、今春からは米沢市の置賜食肉衛生検査所に勤務している。週末ごとに朝日町に通い、「最高の環境で練習できることが山形県に住んでいる人間の特権」と福士さん。17年、18年には日本選手権を連覇した。

激流の中でダイナミックな技を繰り出す福士昴さん=朝日町・最上川カヌーランド

 一方、福士さんが取り組むフリースタイルの「C1」種目は、パドルの片方だけにこぐブレードが付いているスタイルで、その難易度などから国内での競技者は極端に少ない。大会の出場者も顔ぶれが同じで、若い層への広がりはほとんどない。今年4月の日本選手権は新型コロナウイルスの影響もあったが、C1の出場は福士さんだけだった。

 福士さんが学生時代、指導者はおらず、先輩から基礎を教わった後は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で海外選手の技を繰り返し見て腕を磨いた。そして今、自身でユーチューブチャンネルを開設した。かつての自分のような青年が現れることを期待して、さまざまな技を紹介している。

 来年は30歳になる。「世界と戦うには年齢的にあと5年。どこまで上位にいけるかが勝負」。本県は谷地高や寒河江高を中心に、カヌーのスプリントで全国に名をはせる。そんなカヌー王国の一翼を担う覚悟だ。

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