蔵王山の樹氷林再生へ、稚樹のポット苗化推進 県など

2021/5/4 12:53
樹氷林再生に向け、現地で行われているアオモリトドマツの植栽試験。これまでの調査研究で成果も出始めた=2020年6月、山形市・地蔵山頂駅付近

 山形市の蔵王山で樹氷を形成する「アオモリトドマツ」が害虫によって深刻な被害を受け、標高約1600メートル付近では約17ヘクタールにわたって枯死木が広がっている。県や林野庁山形森林管理署は樹氷林再生を目指し、植栽技術の確立に挑んでいる。アオモリトドマツを人工的に育てた実績は全国的にもなく手探りの状態が続く。しかし、これまでの地道な調査研究で成果も見え始めた。本年度は現地での育苗方法の検証に着手し、稚樹のポット苗化を進める。

 アオモリトドマツはスギなどとは違い木材利用されないため、育成や植林に関するノウハウがない。苗木を扱う業者もおらず、植栽には自生している稚樹を利用するか、種子から育てるしかないのが現状だ。

 県森林研究研修センターや同管理署は2019年度から現地で植栽試験に取り組んでいる。特に被害が大きく枯死木のみとなっている蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅そばの林地に、これまで自生の稚樹50本を植栽。今年も夏から秋にかけて数十本を植える予定だ。

 将来的に植栽事業が本格化することを見据え、育苗の研究も進めている。アオモリトドマツの播種(はしゅ)試験では、野ネズミが活動しやすいササを刈り払っても野ネズミによる食害がひどく、現地で種をまく際は金網などで囲う必要があることが分かった。種子は氷点下20度で保存すると2年後でも高い発芽率を保つことも判明し、同センターは「種子の保存や芽出し方法は見えてきた」とする。

 植栽しやすいようにポットで苗木を育てるポット苗化については現地で採取したり、種から育てたりした約6センチの稚樹をポットに入れて生育具合を調べている。現在は標高約1400メートル付近で育てており、一定程度成長した段階で山頂駅(標高1661メートル)周辺に移して現地の環境に耐えられるか検証する。

 アオモリトドマツは高地では3年間で2センチほどしか成長しないといい、山形森林管理署の益田健太署長は「今のアオモリトドマツの大きさになるには100年に近い年月がかかる。息の長い取り組みが必要になる」と話す。

 枯死の原因となるトドマツノキクイムシによる被害は2016年に確認されて以降、急激に広がった。昨夏の調査では新たな枯死木は確認されず、被害拡大は収束しつつある。

 山形新聞、山形放送は今年の夏と秋の2回にわたり、蔵王を会場に8大事業の一つ「みどりのまなび 樹氷再生への歩みプロジェクト―やまがたの森ファミリースクール」を開催する。親子で森林学習活動やワークショップに取り組み、樹氷林の現状や森林が果たす役割について理解を深めてもらう。

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