色あせぬ、「おしん」の川下り名場面 大江町民、橋田寿賀子さんを悼む

2021/4/11 11:47
いかだを製作した庄司利彦さん(右)と、町職員として撮影を手伝った石川博資さん。「おしん」ロケの写真やいかだのイラストを示しながら、当時の苦労話などを語ってくれた=大江町

 本県を舞台にしたNHK連続テレビ小説「おしん」などの脚本を手掛けた橋田寿賀子さん。4日に亡くなり、奉公に出されるおしんの川下りシーンのロケ地となった大江町では、ドラマで関わった町民から死を惜しむ声が上がっている。

 同町沢口の庄司利彦さん(69)=庄司林業会長=は、おしん役の小林綾子さんが乗ったいかだ製作の中心的役割を担い、名場面の誕生に貢献した。「今考えれば、大仕事に携わることができてよかった」と話す。「急な訃報で驚いた。『お疲れさまでした』と言いたい」と冥福を祈った。

1カ月前の依頼

 沈まない木のいかだを作ってほしい―。庄司さんに依頼があったのは、1982(昭和57)年12月22日だった。撮影日は約1カ月後の翌年1月19日。「間に合わせなければいけないと必死だった」と振り返る。いかだ作りは初めてで、所有していた生木を組み合わせてみたものの失敗。浮かべるには乾燥した木材が必要で、知り合いに声を掛け、乾いた杉の丸太をかき集めて再度挑戦した。

 難関だったのは、木材をつなげる針金を隠す作業だ。時代設定にそぐわない針金を隠すため、庄司さんは真冬の山中を歩いて藤のつるを採集。ハンマーでつぶしたつるを広げて針金を覆い、長さ約15メートル、幅約4メートルのいかだに仕上げた。

 ロケ地は、現在のテルメ柏陵健康温泉館の北東を流れる最上川。雪が降りしきる中、庄司さんや当時町職員だった石川博資さん(78)=同町本郷甲=らが、いかだにロープをくくりつけ、4、5人で下流から引っ張った。ロープが水面に浮き上がらないよう細心の注意を払った。緊張しながらの撮影は「一発OK」だった。

優しいお母さん

 橋田さんも現場に来ており、石川さんは「立ったまま真剣に撮影を見守っていた」と懐かしむ。現場のムードが明るくなると、石川さんは橋田さんに記念写真の撮影を願い出た。「『こんなおばあちゃんでいいの?』と言いながら応じてくれた。優しいお母さんという印象の方だった」と笑顔で振り返った。そんな橋田さんと庄司さんが言葉を交わすことはなかったが「大仕事ができて、橋田さんには感謝したい」としみじみ語った。

 おしんの最高視聴率は62.9%を記録。国内では大ブームとなり、海外でも高く評価された。大江町のいかだのシーンも反響が大きく、庄司さんは「自慢になった」と話す。それだけに、橋田さんの訃報はショックだったという。「ゆっくり休んでください」。色あせない思い出を作ってくれた人の安らかな眠りを願った。

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