新型コロナ・県内確認1年~医療界からの提言(6) 山形産業保健総合支援センター長(日本医師会常任理事)・神村裕子氏

2021/4/5 10:41
神村裕子氏

 ―新型コロナウイルスは職場を介して感染が広がるケースが多い。産業医の立場で、事業所が留意すべき点を教えてほしい。

 「感染流行期に出張を命じたり、対面で行う仕事を企画したりするなど企業側の感染予防に対する意識が無頓着と言わざるを得ないケースが見られる。現場の社員から、不安視する声も産業医に寄せられている。目先のビジネスにとらわれず、感染防止対策をしっかり取ることが将来的な企業の価値につながる。そうした姿勢を社内外に示すことが経営者の責任だ。社員が不安に思わないよう、国の業態別の指針に沿った感染防止マニュアルを社内できちんと策定しておくことが大切。交渉はすべて対面と考える人がいまだに多いが、それは今までの考え方だ。人が動けば、当然ウイルスは動く。誠意を尽くした上で、直接会うことをできるだけ避けることが求められる。リモートでの交渉は、相手に対して失礼には当たらないという感覚を身に付けてほしい」

 ―テレワークの実践、デジタル社会の推進など企業側の意識は大きく変わった。人との接触を避けるビジネスも浸透してきた。

 「出社する人数を制限したり、勤務時間を短縮したりという安易な見直しにとどまる企業が多い。テレワーク推進のための設備投資のほか、社員それぞれのWi―Fi環境の整備もサポートしなければならない。新たな働き方を経営者層にアドバイスできるのは、顧客を多く持ち、経営に関する多用なノウハウがある地方銀行だと感じている。テレワークやICT(情報通信技術)の導入に関し、積極的に企業側に助言してもらいたい。ウィズコロナの時代に、地域を挙げて地銀を核とした支援策を打ち出せれば、企業側は従来より円滑な経営判断ができるだろう」

 ―本県は3世代同居率が高い。県内の流行第3波の傾向として、家族内での感染拡大が目立つ。

 「家族内でうつさないことは、この第3波の局面で非常に大事な要素と言える。本県は家族だけではなく親族との交流も盛ん。期限を設けて、家庭内でもマスクを着用するなど対策を強化してほしい。職場で徹底している感染防止対策を、今は家庭内でもしっかり実践してもらいたい。収束に向けては一人一人の頑張りが重要となる」

 ―日本医師会常任理事として、新型コロナ対策で取り組んできたことは。

 「主な担当は産業保健分野。職場での正しい感染防止対策について、都道府県医師会を通じて普及に努めている。男女共同参画分野も担う。この点で言えば、会社側は社員一人一人が家庭内でも重要な役割を担っているという意識を持ち、働き方をサポートしなければならないということを言いたい。企業側はコロナ対策だけではなく、コロナ禍でどうすれば社員が継続して働けるかを考える機会につなげてほしい。その際、必ず女性の意見を取り入れてもらいたい」

 ―最大の課題は感染防止と経済再生をどう両立していくか。コロナ下で県内企業、事業所が生き延びるため取り組むべきことは。

 「仕事は世の中に必要とされて価値が生まれる。経営者は、当面の補助金や給付金をもらって息をつくのではなく、自分たちの業務は社会情勢に照らして持続性があるのか、承継する人はいるのか、をしっかり考えてほしい。現状に固執せず、場合によっては業態を変えるなど生き残る道を柔軟に探る姿勢が大切だ。客観的な視点が重要であり、その際、地銀による経営的なアドバイスが大事ではないだろうか。コロナ禍では地域経済がうまくまとまり、課題解消に向かっていく必要がある。一人一人が周囲を思いやり、感染せずに健康を維持しながら、社会の中で自身の役割をしっかりと果たすことが求められている」

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