新型コロナ・県内確認1年~医療界からの提言(2) 県立中央病院長・武田弘明氏

2021/4/1 09:09
県立中央病院長・武田弘明氏

 ―県立中央病院(山形市)は新型コロナウイルスの治療を中核的に担ってきた。一般診療や手術などにどんな影響があったか。

 「新型コロナとそれ以外の一般診療を完全に両立させることは不可能だ。コロナの患者を診た分だけ、一般診療の受け入れは抑えなければならない。院内では昨年4月の段階で二つの病棟をコロナ専用に切り替えた。大混乱の中で流行第1波が始まった。11月末からの第2波は感染者数も増えたが、重症者が増えたことが特徴。重症者の治療のため集中治療室(ICU)を一時的にコロナ専用として稼働せざるを得ない時期もあった。高度な手術や重篤な患者への救急医療にも影響は出た。私たちの最大の使命は高度急性期医療の提供。そこは100%は無理にせよ、死守してきた」

 ―新型コロナウイルスの恐ろしさは。

 「感染者の2割ぐらいが無症状で、治療法も確立されていない。急激に症状が悪化するだけではなく、感染拡大の恐ろしさもある。3月の第3波では同時多発的に発生し、感染源がたどれないケースが目立つ。それが家庭内に広がり、高齢者や持病のある人にも広がってしまう怖さがある」

 ―新規感染者数が連日2桁台となり、病床の逼迫(ひっぱく)が懸念される。

 「気になるのは『調整中』の数字が尋常でないこと。従来通りに入院させるための調整がすぐつかなくなっている。都会で見られたような状況が今、本県で起きている。第3波は一気に感染が拡大しており、県内の医療界が総力戦で当たる必要がある。県立中央病院では新型コロナの専用病床45床の約8割が1週間で埋まってしまった」

 ―県内感染者が増加の一途をたどれば、県立中央病院の専用病床をさらに増やすことも想定されるのか。

 「その場合は単に病床を増やすだけでなく、医師や看護師といったマンパワーを充当できるのかという問題が生じる。各診療科にも影響が出るだろう。呼吸器内科は新型コロナの治療を1年間続けてきたことで高度な肺がん治療などに携われない医師も出てきて、通常の医療ができなくなっている。山形大医学部付属病院で手術を受けてもらった事例もある」

 ―感染者の受け入れに関し、医療機関の地域バランスなど見えてきた課題は。

 「新型コロナの感染者を受け入れてきた病院は(県内の8医療機関で)限られており、何とかしのいできたが、第3波はどこまで広がるのか予測できない。(感染者や疑い患者を受け入れられる医療機関の)仲間がもっと増えてほしいと思っている。現実的には全222床ある専用病床の有効活用策として、2次医療圏(県内4地域)を越えて患者の移送をどう考えるかも課題。医師会との連携も欠かせない」

 ―ワクチン接種が本格化する中で病床逼迫を避けるため、医療現場から改めて県民に求めたいことは。

 「ワクチンが対象者に行き渡るには時間がかかり、接種時期もまばら。半年経過すれば、ワクチンの効力が切れる可能性もある。新しい生活様式を徹底して守ってもらうしかない」

 ―県立中央病院として、今後の医療提供態勢をどう考えているか。

 「この1年間、高度急性期の医療が必要な患者数は減っていない。新型コロナの受け入れには限界がある。死守しなければならない高度急性期医療と、どうバランスを取り、折り合いをつけるか。地域住民の命を守るため、知恵を絞り、慎重に判断していきたい」

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]