酒田市東部中(舟山邦彦校長)は来年度、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つ・ジェンダー平等実現などの視点を取り入れ、性別差を極力解消した「標準服」を導入する。詰め襟の学生服だった男子は女子と同様のブレザースタイルに変更し、女子もスラックスを着用できる。標準服導入を機に、生徒が制服の着こなしを見直す機会を設けるなど、教育面での効果も見込む。
標準服では、黒地にピンクのチェック柄が入ったスラックスを導入し、ブレザー、スラックス共にスリム、ゆったりの二つのシルエットを用意した。従来のリボンに加え、3種類の柄のネクタイが選べるほか、チェックの色が異なる夏服を通年で着用可能とするなど、生徒の体形の違いや多様な好みに対応する。
同校によると、スカートについてはこれまで、生徒らから「普段はズボンだし、動きづらい」「冬場は寒い」などの声が上がっていた。標準服はこうした機能面の課題解決や性的少数者(LGBTなど)への対応に加え、生徒の多様性への理解を深め、主体性を育むといった効果を期待する。保護者や生徒の意見を聴きながら、1年ほどかけて導入を検討してきた。
庄内地方の学校制服を扱うファッションワールドニシムラ酒田店(同市)の担当者は「私立高校では女子のスラックス着用を認めるといった対応が見られるが、東部中のように多様な着方が選べるのは珍しい」と話す。スカートとスラックスを両方買う新入生がいたほか、男子がピンクのネクタイを購入したり、在校生の女子がネクタイを求めたりするなど、好意的な反応が目立つという。
SDGsを積極的に学習に取り入れている同校では先日、ジェンダーについて学んだ3年生が成果を発表した。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言にも触れ、「男性が長髪でもいい。男らしさ・女らしさではなく、個人の『らしさ』を認めていこう」と述べるなど、男女平等や多様性への理解が着実に浸透してきている。
標準服導入を機に、ルールの必要性や、公の場でのマナーについて再確認してもらおうと、今月1日の生徒総会では▽靴下の色は白▽かばんに付けるキーホルダーは1個まで―といった校則の見直しについて、各クラスから意見を募った。生徒会は今後、全員が気持ちよく学校生活を送れるような校則への変更を目指し、検討を重ねるという。
赤塚枝美教頭は「自由な選択は尊重されるべきだが、責任が伴うことを理解してほしい。TPOをわきまえた服装などを、自分で判断する力を養ってもらえたら」と話している。
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