“共に歩む”を紡ぎ続ける 本県避難者へのフリーペーパー「うぇるかむ」

2021/2/22 09:30
2011年8月から定期発行されている避難者向けフリーペーパー「うぇるかむ」

 東日本大震災に伴って本県に避難した世帯には、月に1度フリーペーパー「うぇるかむ」が届く。震災後の2011年8月から定期発行され、今月で129号を数えた。編集経験ゼロから始めて約10年。放射能の影響や補償手続きなど実用的な情報のほか、カウンセラーのコラム、郷土料理のレシピなどを掲載してきた。編集部の結城健司さん(52)は「発行を続け、忘れてないよと伝えたい」と話す。

 「うぇるかむ」は山形市の復興ボランティア支援センターやまがたが発行。避難者が1万3797人に上った12年1月には、5千部を刷った。現在は1563人と約1割に減ったものの、2200部を発行し、公民館や図書館にも置く。国の助成金などを元手に4人で企画、取材、編集をこなす。

 15年から携わる同センター事務局長の結城さんは、前職のNPOで避難者との交流があった。「お母さんが怒りっぽくなった」「子どもが学校になじめない」。生の声を多く聞き、力になりたいと参加した。震災直後には多種あったフリーペーパーの廃刊が近年は相次いでおり、うぇるかむの役割は増していると感じている。

「うぇるかむ」編集部で仲間と語る結城健司さん(左)。震災10年記念誌の編集に取り組んでいる=山形市

 誌面はA4判4~6ページで、ラインナップは創刊当初から大きくは変わっていない。安心感につながると考えるからだ。読者の投稿を載せる「みんなの声」からは心境の変化がうかがえる。「いまだに時間が止まっているよう。いつ戻れるのか、何ができるのか」(12年、南相馬市の女性)。「子どもも私もお友達ができました。毎日楽しいです」(14年、福島市の女性)。当初は不安やつらさを吐露する内容が多かったが、徐々に地域になじんでいく様子が垣間見える。

 今年は新型コロナウイルスの影響で交流会が開きにくい上、雇用環境も悪化している。結城さんによると、周囲に知人が少ないことや住宅の家賃、失業問題など、避難者ならではの問題もあるという。対応するには避難者が置かれた状況への理解が必要で、息の長い支援に向け研修なども重ねている。

 現在は、3月11日に発行予定の「10年記念誌」編集の真っ最中だ。各地の社会福祉協議会やNPOなどの活動の軌跡を記している。全国で最大規模の避難者を受け入れた本県では、社協の相談員が住宅を丁寧に回って、個別のニーズを聞き取ってきた経緯がある。結城さんは「避難者も県民の一人。行政とのパイプ役として末永く付き合っていきたい」と話している。

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