大差の波紋~コロナ下の知事選[3] 市長との深い溝、露呈

2021/1/28 08:49
知事選に向け、新人の大内理加氏に推薦状を手渡す県市長会有志。直後の記者会見では吉村県政に対する痛烈な批判が相次いだ=昨年12月24日、山形市・ホテルメトロポリタン山形

 「誰とは言わないが、心外だなという思いも持った」。知事吉村美栄子は27日の定例記者会見で、知事選中に吹き出した県内市長からの批判に不満を隠さなかった。「これからも市町村と連携したいと思っているが、あんなふうに言われたのはショックだった」

 吉村県政を公然と批判したのは、知事選で新人の元県議大内理加を推薦した県市長会の有志8人。大内氏に推薦状を手渡した先月24日の合同記者会見は、異様な雰囲気に包まれた。「反応の鈍さ、感覚のずれを感じる」「総合支庁では決断ができなく、上からの指示ばかりだ」「われわれの声を聞く姿勢が変わってきた。かなり距離感を覚える」。その場の記者たちが驚くほど痛烈な非難だった。市長たちの意見は大内の会員制交流サイト(SNS)などに投稿され、吉村との間にある溝が県民に広まった。

 酒田市長丸山至は有志に加わった一人だ。知事選告示前の先月29日、県が同市の飛島に県産米10キロを全世帯分届けたことにも強い違和感を抱いた。定期船の欠航が続いたことによる緊急支援としているが、吉村県政3期12年間にはなかったからだ。「飛島への支援は一義的に市が担うこと。頭越しにされた感じだ」

 しかし、知事選は吉村が圧勝した。丸山は「難しい選挙と分かっていたが、もう少しいい戦いになると思っていた」と胸の内を明かした。そして、「一般の有権者が持つ吉村県政への印象は、現場で行政に携わる私たちの感じ方とは違うのではないか」と続けた。

 東北公益文科大の公立化や酒田港の振興など県に主体的に関わってほしい市の案件は数多い。だが「知事にこちらの実情や要望がなかなか伝わらない」という。県民党を掲げる割に、近しい首長だけが優遇されるとも感じている。「まずは公約の確実な実現を望む。さらなる県勢発展のためリーダーシップを発揮してほしい」。丸山はそんな願いを口にした。

 合同会見で吉村県政を「上からの指示ばかり」と表現した新庄市長山尾順紀は「全てを評価していないわけではない」と話す。県立新庄病院の改築、東北農林専門職大学(仮称)など市内で県が取り組んでいる事業があるからだ。しかし、県政運営に対する不満は根深い。「基礎自治体のまちづくりを応援するのが県本来の立場ではないか。同じテーブルに着き、きちんと話を聞いてもらいたい」と注文を付けた。

 「距離感を覚える」と会見で発言した長井市長内谷重治は大内の勝算が低いことを認識した上で支持したという。「3期目になって県政は大きく変わった。現状を選挙で訴え、知事が続投した時に配慮してもらうための行動だった」と批判の意図を説明する。「県と市町村が連携しないとできないことは多い。知事選を契機に改めて県民の幸せのために一緒に頑張りたい」と前向きな姿勢を見せた。

 今回の知事選で「中立」の立場を取った県市長会長の東根市長土田正剛は「コロナ禍の今こそ国はもちろん、県と市町村が一体となることが求められる。市長会長として両者の話をつなぐ役割を果たしたい」とする。2月中旬には県市長会の総会を開催する予定で、吉村にも出席を打診中という。

 土田は今回の知事選を振り返り、最後にこう強調した。「勝った知事には『ノーサイド』を宣言してもらえればありがたいが、思うところがあるだろう。ただ、選挙のしこりを持ち込み、今後のコロナ対応に齟齬(そご)を来すことは、あってはならない」(文中敬称略)

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