大差の波紋~コロナ下の知事選[2] 崩れた勝利のシナリオ

2021/1/27 09:14
現職の当選確実の一報が入り、選挙事務所に姿を見せる大内理加氏(左)。重苦しい空気が流れた=24日、山形市流通センター2丁目

 知事選の開票から一夜明けた25日、山形市の自民党県連会館に役員の県議が急きょ集まった。自民推薦の元県議大内理加が、現職吉村美栄子に23万票余りの大差で敗れた戦いを振り返り、出席者の一人がつぶやいた。「現職の『コロナ克服』というフレーズが県民に受け入れられたのだろう」。異論は出なかった。衆院議員加藤鮎子は、その日のうちに県連会長を引責辞任する意向を役員に伝えた。

 知事選を巡り、加藤は2019年9月の県連会長就任直後から「不戦敗はあり得ない」と繰り返した。自民は過去2回、非自民勢力が支持する吉村に無投票当選を許し、対立軸を示すことができなかった。それだけに県政トップ奪還に懸ける思いは強かった。

 県連は昨年2月、候補者選定に向けて公募に踏み切った。県内各地で応募者による討論会を開き、一本化する方針を決めた。県民を巻き込みながら、自民組織が一枚岩となって戦う機運を高める狙いだった。

 加藤が思い描いた勝利のシナリオは新型コロナウイルスの感染拡大でもろくも崩れた。討論会は中止を余儀なくされ、公募に応じた1人が「一身上の都合」として辞退するなど不測の事態もあった。

 大内は5月の県連総務会で擁立が決まった。自民県連は県議や系列の市町村議らによる組織戦の準備を整えた。しかし、コロナ禍で大規模な集会は開けず、支持者と握手もできないなど新人にとって不利な状況は続いた。県内各地で1400回以上のミニ集会を重ねたものの、選対本部長遠藤利明が「のれんに腕押しだった」と表現するほど手応えをつかめずにいた。

 対する吉村は運動期間中の土曜日も県庁知事室で観光や旅館、農協関係者と会い、新型コロナ対応に関する要望を受けた。コロナを前面にした“戦略”に、県議の重鎮は「まるで公務が選挙運動だ。コロナという性質上、批判しにくい」と苦々しい表情を浮かべた。

 告示日(7日)に政府の緊急事態宣言が再発令され、コロナへの県民の意識は高まる。菅内閣の支持率は続落した。その中で自民に突き付けられた現実は、過去2回の参院選を含めた「全県区の選挙3連敗」だった。

 開票日、午後8時を過ぎると、選挙事務所のテレビには現職の「当選確実」の報が流れた。重々しい空気の中、遠藤は冷静に振り返った。「コロナ禍の上、豪雨や豪雪もあり非常時に対応する現職が有利だった」

 静まり返った事務所で、大内は報道陣に囲まれた。アフターコロナを見据えて「選ばれる山形」を掲げ、交通インフラ整備の前倒しや「教育県山形」の復活などの政策を訴え続けた戦いを顧み、「有権者にとって、今のコロナ対策の方が大きな関心事だった。自分の主張とのズレがあった」と力なく語った。県連幹事長森田広も「県民にもっと寄り添った政策を考えていくべきだった」と言うのが精いっぱいだった。

 「分厚い陣立てで挑み、終盤戦、陣営の動きが活発化しても大差で敗れた。コロナの影響は当然だが、それ以外で自分たちが見えていない要因があるのではないか」。県連幹部の一人は26日、ぼうぜん自失の表情で話した。自民関係者は惨敗の衝撃をまだ受け止め切れずにいる。(文中敬称略)

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