大差の波紋~コロナ下の知事選[1] 吹いた“有事”の追い風

2021/1/26 09:17

[PR]
 任期満了に伴う知事選は、県政運営の継続を訴えた現職の吉村美栄子氏(69)が、新人の大内理加氏(57)を23万票余りの大差で退け、4選を決めた。新型コロナウイルスの感染が懸念される中で行われた知事選は、県政界にどのような影響をもたらすのか。選挙結果を検証し、今後を展望する。(文中敬称略)

 投開票が行われた決戦の日曜日。吉村陣営の事務所内は終始、和やかなムードが漂っていた。吉村は午後7時45分に拍手とともに到着。隣に座る後援会長の岡田久一と談笑する姿が見られた。歓喜の瞬間は早々と訪れ、万歳の後、熱気冷めやらぬ会場で陣営幹部はつぶやいた。「勝因は12年間の実績とコロナ対策、そして吉村美栄子の人柄だ」

 県のコロナ対策を県民の8割が評価している―。陣営が昨年2月以降、定期的に行っている世論調査はこうしたデータを示していた。「県民の一番の関心はコロナ対策」。吉村が出馬表明する前に、既に戦略の方向性は固まっていた。

 ただ、吉村自身は迷っていた。「『3期12年を一区切りにする』との思いもあったようだ」と陣営幹部は本人の胸の内を明かす。その迷いを吹っ切ったのがコロナの感染拡大だった。吉村は4選を目指す考えを明らかにした昨年10月25日の役員会で言い切った。「大変な時に現職として逃げ出すわけにはいかない」。候補者と陣営の思いがかみ合い、勝利に向けた歯車が回り出した。

 12年ぶりの選挙戦に不安はあった。県内各地に張り巡らせた後援会組織は高齢化し、代替わりも進んだ。2期連続の無投票当選により、潜在的な批判票がどの程度あるかも分からない。こうした中で「コロナ克服、山形経済再生」を前面に打ち出すことで現職の強みを最大限に発揮する戦略を徹底した。

 念頭には昨年7月の東京都知事選もあった。現職の小池百合子は「感染拡大につながる密を避ける」としてインターネットでの動画配信を中心とした選挙活動だけで大勝していた。

 ただ、コロナ対策と支持拡大を両立する上で陣営内で意見の衝突はあった。県内でも感染者が急増していた12月の選対会議では、集会の開催について「陣営から一人でも感染者が出たら終わりだ。リスクは避けるべきだ」「人を集めて直接訴えなければ支持は広がらない」と意見はまとまらなかった。

 結果的に選挙期間中に県内の感染は小康状態となり、街頭に有権者を集めた選挙運動が可能な状況となった。現職の圧倒的な知名度により、有利に戦いを進めているという緩みも一部であったものの「コロナ対策に空白はつくらない」「大変な時に知事を変える必要がない」との主張が広く受け入れられたとみられる。

 「相手は巨大な自民党組織。コロナ禍でなければ、厳しい選挙になっただろう」。開票結果が伝えられた選挙事務所で連合山形の小口裕之は冷静に分析した。

 ただ、訴えがほぼコロナに絞られ、他の政策がかすんだ感は否めない。吉村陣営は公開討論会の参加を公務で忙しいとの理由で断った。吉村は「政策は各地の街頭などで訴えた」とするが、公約で掲げた子育て支援や教育、産業振興などの政策が有権者に広まったかは不透明だ。

 陣営幹部も予想以上という40万票。支援県議の一人は注文を付けた。「12年間で全ての政策が前に進んだわけではない。おごることはないと思うが、これまで通り対話重視の県政を貫いてもらいたい」

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]