知事選、現場の思い(6) モンテの新スタジアム構想

2021/1/17 10:24
サポーターで埋まった天童市のNDソフトスタジアム山形。新スタジアム建設議論の進展を期待する声は多い=昨年10月

 昨年12月に天童市で行われたサッカーJ2・モンテディオ山形のホーム最終戦。試合後のセレモニーで、退団する本田拓也選手が白い息を吐きながらマイクに向かった。「新しいスタジアムができればもっと山形が盛り上がる。県の関係者の皆さま、ぜひ新しいスタジアムを造ってください」。選手からの異例の訴えにスタンドはどよめき、拍手が湧き上がった。

 新スタジアム構想が浮上したのは2013年。15年に当時のモンテ運営会社社長が検討委員会を立ち上げた。17年には民間6社と3銀行が出資し、建設・運営の主体となる「新スタジアム推進事業株式会社」を設立。19年3月に公設民営を軸にした事業化を掲げ、25年の運用開始を目指す整備基本計画を策定した。

 基本計画は県に提出され、県議会と県市長会、県町村会にも報告が行われた。だが、その後県は、県議会でスタジアム建設について「J1復帰・定着に向けた取り組みを着実に進めたその先の課題」との答弁を繰り返しており、構想は前に進んでいない。

 新スタジアム計画は全国各地で進んでいる。昨年2月にはJ2京都のサンガスタジアム(府立)が開業し、金沢は市が23年度の完成を目指し、長崎は民間主導で24年の完成を予定する。今回の知事選で、現職の吉村美栄子氏は政策集でスタジアムに触れているが、「整備の検討支援」にとどまり、新人の大内理加氏は「各種スポーツ施設の整備」に言及するもののスタジアムの文字はない。

■争点にならず

 「知事選で機運が盛り上がると思っていた」「山形は何年かかるのか」。山形市の千歳地区新サッカー場誘致委員会の岡田正昭委員長(73)と渡辺誠事務局長(71)の表情は暗い。市中心部など公共交通機関でアクセスしやすい場所への建設を望む山形市中心商店街街づくり協議会の船山隆幸会長(61)も明確な争点にならない状況に肩を落とす。両団体は老若男女が一年中利用できる機能が必要と考え「相手チームのサポーターも多く来県する。必ず地域の活性化につながるはずだ」と期待を寄せる。

 現本拠地のNDソフトスタジアム山形に隣接する天童市長岡地区の長岡モンテディオサポーターズクラブは09年の設立で、ホーム戦時には道路沿いにのぼり旗を立てるなど地域ぐるみでチームを応援してきた。高橋一樹会長(71)と村山隆副会長(76)は地元への立地を希望した上で「新スタジアム建設でモンテへの関心がさらに高まり、チームだけでなく、山形のスポーツ、地域、県全体が盛り上がる」と口をそろえる。

 昇格と降格を2度経験し、J1定着の難しさは皆が知っている。サポーター団体連合会「ウルトラスACMY(アクミー)」代表の藤倉晶さん(45)は隣県の新潟や仙台などを例に挙げ「魅力的なスタジアムをきっかけにチームが強くなるケースはある」と指摘。選手のモチベーション向上や入場者・スポンサーの増加に結び付き、強化費もアップしてJ1に定着できるチームに成長する―と見通す。「スタジアムを起点に好循環が生まれ、チームとスタジアムが街づくりの中心になる」と強調する。

■光がほしい

 コロナ禍で街は暗く、重い空気に包まれている。推進事業会社の基本計画によると、スタジアムの建設費は72億5千万~113億円と巨額だ。ただ「早く決断してほしい」との思いは、サポーターやチーム関係者だけでなく、多くの県民に共通したものだろう。取材に答えた一人は訴える。「明るい光がほしい。新スタジアム計画は県民の夢の設計図の一つになるはずだから」

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