知事選、現場の思い(5) 外国人労働者

2021/1/16 12:17
コイル作りを手際よくこなす技能実習生。製造現場の貴重な戦力となっている=鶴岡市・ウエノ藤島工場

 県内の外国人労働者は2019年10月末で4496人と、過去最多を記録した。同年4月の改正入管難民法施行で新たな在留資格が設けられ、受け入れが拡大。人手不足の救世主と期待される一方で、失踪したり、新型コロナウイルスの影響で金に困って犯罪に手を染めたりする例も出ている。言葉の壁などで日本になじめず孤立することが背景の一つで、地域での支援が課題となっている。

 コイル製造のウエノ(鶴岡市、上野隆一社長)藤島工場では19年から技能実習生のベトナム人女性4人が働く。賃金などの労働条件は、同様の仕事をする日本人と変わらない。3~5年間で技術を習得し母国に帰る予定だが、高橋純人総務課長は「スキルが上がっており、会社にとって貴重な戦力。継続雇用できれば助かるのだが…」と語る。

 ただ企業側の思惑と、彼らの意向は必ずしも一致しない。実習生の一人、グエン・ティ・トゥさん(20)は「今の仕事は面白いけど、いずれは東京で働きたい気持ちもある」と話す。母国の家族に送金しており、より高い賃金に引かれるという。高橋課長は「コロナが収束して景気が良くなれば、また人手不足になる。常に人材が確保できる態勢づくりが必要だ」とし、外国人が働きやすい環境整備を求める。

 「実習制度は受け入れ企業の負担が大き過ぎる」。企業と実習生をつなぐ村山地方にある監理団体の男性は実情を明かす。実習生は入国前に4、5カ月間、最低限の日本語と風習を学ぶが、ほとんどが会話できるレベルには達しない。入社後に賃金を払った上で言語を勉強させたり、地域の祭りに参加させたりする企業もある。衣食住の準備に加え、こうした手助けもすると実習生1人への初期投資は数十万円に上る。男性は「(実習期間)3年のうち2年は赤字を覚悟してほしいと伝えている」という。

 県内の外国人労働者の半数を占める技能実習生は、ベトナム人を中心に急増している。11年から累計500人以上の仲介を担当してきた男性は「出稼ぎを目的とする彼らに対し、企業が即戦力を求めるとギャップが生まれる」と話す。当初は習得した技能を母国で生かしたいと夢を語るエリートが多かったが、最近は簡単な工場勤務で稼げればいいという人も目につくという。

 裾野が広がるにつれ、問題も起きている。新型コロナの影響で仕事を失った県外の実習生による連続窃盗事件が県内で発生。失踪事案もある。男性は「フォローすべきは制度を推し進めた国だ」とした上で、実習生が地域に定着するための取り組みを企業頼みにせず「語学研修に補助を出すなど県や市町村にも積極的に関わってほしい」と要望する。

 県は19年度に外国人総合相談ワンストップセンターを設置した。しかし、相談件数は増えていない。新型コロナに感染した場合の対処法や渡航規制などに関する情報を発信している会員制交流サイト(SNS)のフォロワー数も計千人強と、くまなく届いているとは言い難い。

 ウエノで働くファム・テイ・クイン・ガーさん(24)は「会社の人は言葉を教えてくれる」というが、翻訳アプリを使う会話は心もとない。語学教室の会場は職場から約10キロ離れ、運転免許のない実習生にとってハードルが高いという。コロナ下で相談が複雑化する中、外国人の受け入れを推進する県には「待ちの姿勢」ではなく、困り事に手を差し伸べるような施策が求められる。

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