鈴木は過去3度の選挙で、いずれも一昨年秋に米沢市長選に転じた近藤洋介と対決した。3連勝したとはいえ、政治経験を考慮すれば「胸を借りる」構図だった。次の選挙は逆の立場となる。ましてや新人の加藤は、鈴木の地元の南陽市在住で、障害者のバリアフリー化促進で応援した間柄。「意識しない方が不自然」と自民関係者は語る。
「顔つきが変わった。対立候補が明確になったからだろう」と語るのは米沢市の自民関係者。象徴的だったのは昨年12月に米沢市内北部で開かれたミニ集会での言動だ。国政での取り組みと知事選での大内理加への支援を呼び掛ける一方、自分の選挙に関しては一切口にしなかった。
それが逆に、その場にいた自民関係者の多くに強い決意を感じさせた。鈴木は昨年夏から米沢市内の支持者宅を集中的に戸別訪問した。従来の支持層のほか、近藤票の取り込みが狙いだ。衆院選の話題を持ち出さないのは「やるべきことをやっているとの自覚の表れだろう」。自民関係者は口をそろえる。
米沢市内で13日に開かれた大内の個人演説会。応援演説を終えた鈴木は取材にこう答えた。「自分の選挙の前にコロナの厳しい状況を緩和することが大事。昨年の豪雨災害対策もしっかりしていきたい」
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吉村美栄子が南陽市内のスーパー3カ所で11日に行った街頭演説。陣営幹部が加藤を紹介した。「心一つに吉村県政を支え、コロナを乗り切ろう」。約100人の吉村支持者は加藤の熱い訴えに沸き立った。
加藤は参院議員舟山康江、芳賀道也、非自民系政党組織などによる「5者会議」が擁立した。支持者の多くが吉村と重なる。後援会幹部に就く予定の会社役員は「相乗効果を出したい」とし、加藤自身も「(吉村勝利が)今後の政治活動に影響する」と位置付ける。
だが現場では完全な連動とはなっていない。加藤、吉村の2人を支持する置賜地区の議員は「市町村ごとの国民の組織が確立しておらず、指示系統が明確になっていない」と明かす。
しかも吉村が2区で個人演説会を開くのは一部地域で、南陽市以外での加藤の応援機会は限られる。「政治家には会って票を増やすタイプと、そうでないタイプがいる。加藤は明らかに前者」と語る後援会関係者は連携不足に唇をかんだ。
加藤陣営は早期の衆院解散を念頭に知事選での連動を自らの選挙につなげる思惑があった。ただコロナ禍、五輪延期などで選挙日程は不透明だ。加藤の支援者は「作戦を練り直す。知事選での運動を足掛かりに、地道な活動を積み重ねていく」と切り替えた。
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