知事選、現場の思い(4) 地域医療

2021/1/15 12:55
最上地域の有料老人ホームで冬を過ごす小野菊江さん(右、仮名)。定期的に県立新庄病院に通うが、支える側の高齢化も進んでいるのが現状だ

 最上地域の山あいに古民家を改修した有料老人ホームが立つ。10人ほどの入所者の平均年齢は「超高齢」の90歳。普段は1人暮らしで、冬場に限って身を寄せる小野菊江さん=仮名=はつい最近、その大台に仲間入りした。

 夫に先立たれ、子どもは県外で暮らす。年老いた母親を心配する子どもは施設入りを望むが、春が来れば愛着のあるわが家に戻る。施設暮らしに不満があるわけではない。「(自宅で)花植えを楽しみたい」からだ。

 そんな菊江さんにとって2、3カ月置きの通院は欠かせない。地元の医療機関は診療科が限られるため、地域医療の中核を担う県立新庄病院(新庄市)まで出向く。1日かけて内科、眼科、耳鼻咽喉科、整形外科、それぞれの先生に診てもらう。片道1時間ほどの送迎は、近所の親類が協力してくれる。だが、その親類も70代になる。老人ホームの管理者は「支える側の高齢化も急速に進んでいる」と危機感を口にする。新庄病院の改築、2023年の開院が待たれる中、地域の医師増加を強く願う。

 過疎地にあって、住民が自分らしく長生きできる医療の提供は可能か。全国ベースで医師数の充足状況を示す国の「医師偏在指標」で本県は全国40位と低迷している。県内を見渡すと最上地域の医師数の少なさは際立ち、全国335の2次医療圏のうち下から2番目の334位だ。庄内、置賜両地域も200位台にとどまる。

 命と暮らしに深く関わる医療分野で、重要なのが安心感だ。特に出産を控える女性は本県の医療環境をどう見ているのか。

 置賜で新生児の分娩が可能な医療機関は、米沢市立病院と同市内2カ所の民間診療所、公立置賜総合病院(川西町)のみ。医師不足で04年に白鷹町立病院、05年に公立高畠病院、08年に小国町立病院が相次ぎ分娩を休止して以降、西置賜では出産を受け入れる医療機関がゼロの状態が続く。

 米沢市の民間産婦人科医院で出産を予定している長井市の富樫友子さん(30)=仮名=は、妊婦健診のため片道約25キロの道のりを自家用車で通う。夏場でも30~40分かかる。健診は計15回程度あり、負担は小さくない。出産予定は2月。陣痛が始まれば家族に車で送ってもらうつもりだが、冬道はさらに時間を要し、不安は増す。「(時間的に)出産まで間に合うだろうか」。心配そうに大きなおなかをさすった。

 長井市から距離的に近い置賜総合病院でも出産は可能だが、健診の待ち時間の短さや、産後の食事や個室など環境が充実している点から、民間診療所を選んだ。総合病院には「何かあったときに安心」という思いがある一方、新型コロナウイルス感染症指定病院であることも正直、頭をよぎった。「病院が悪いわけじゃない。でも、もしものことを考えたら、やっぱり怖い」。ただでさえ大きな不安を感じる毎日。可能な限り安心して産める環境を整えたかった。

 「近くに産科の民間医療機関があれば、そこで産む選択をしたと思う。長井は住み心地がいいけど、産科に限らず子どもの通院の選択肢が少な過ぎる」とため息がまた、漏れた。医療体制充実への県民の期待は大きい。

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