知事選、現場の思い(2) 農業振興

2021/1/13 09:31
「佐藤錦」の剪定(せんてい)を進める東根市果樹研究連合会の山口広平会長。所得向上の実感はないという=同市若木通り4丁目

 本県の基盤産業である農業。各地域で気候風土の特性を生かした品目が栽培されており、2018年の農業産出額は2480億円と過去10年の最高額を更新した。本県農家全体の所得を示す同年の生産農業所得も1080億円と09年の約1.8倍に伸びている。しかし、数字ほど収入増を実感できている農家は多くなく、高齢化や経営体、耕作面積の減少などの課題に直面している。

【コメ】

 酒田市沿岸部、袖浦地区の生産者約130人で組織する農業法人「そでうらファーム」は、約200ヘクタールで水稲を栽培する。同地区では生産者の高齢化を受けて収益性の高い園芸作物への転換が進み、水田の集積、大規模化が加速している。佐藤助弘代表理事は「水稲をやめる人がいるのは仕方ないことだが、先人が苦労して切り開き、代々受け継いできた砂丘地の農地を守ることは重要だ」と語る。

 食生活の変化や少子高齢化で、コメの消費は減少傾向が続き、供給過剰で「コメ余り」になると米価は下落する。農地の集積、大規模化や省力化への取り組みを進めても、価格が安定しなければ生産基盤を維持し、担い手に引き継ぐことは難しくなる。

 県を主体とするブランド米の開発や販売戦略は奏功している部分もあるが、佐藤代表理事は「豊作を喜べない状況をなんとかしてほしい。もっと効果的な消費戦略も必要だ」と話す。新型コロナウイルス禍で消費動向が不透明な中、生産現場の危機感は増しており、再生産可能な収益を守る施策が、これまで以上に重要となっている。

【サクランボ】

 県産サクランボの主力品種「佐藤錦」発祥の地である東根市。県内の生産農業所得が伸長しているとはいえ、同市内の若手果樹農家で組織する市果樹研究連合会長の山口広平さん(43)=同市若木通り4丁目=は「不景気もあり、(12年前と比べて)農家一人一人の所得向上につながっている実感はあまりない」と現状を語る。

 サクランボについてはトップセールスを重ねるなど行政を挙げてブランド化を推進してきた。「山形と言えばサクランボ」との全国的な知名度は得てきたが、「高級品」とのイメージが先行している感は否めない。山口さんは「ブランド化推進の取り組みはありがたい」とした上で「サクランボには『高級』『ブランド』だけでなく、品種や価格帯によって幅広い魅力がある。それらをアピールすることでさらに伸びしろが生まれるのではないか」と提言した。

【新規就農】

 JA山形市の「山形セルリー」団地は79棟のセロリ栽培ハウスが立ち並ぶ。部会の21人のうち8人が利用し、18年に就農した佐藤仁紀(ひとのり)さん(38)=同市嶋南2丁目=もその一人。現在は11棟で年間約40トンを二期作し、出荷額は1200万円に上る。手取りの収入は会社員時代には及ばないものの「努力した分だけ自分に返ってくる。やりがいを感じている」と笑顔だ。

 非農家出身のため、山形市の補助事業を使い、農機具を毎年買いそろえてきた。「新規就農者の4、5年目にも利用できる制度があれば助かる」。佐藤さんは1年目からハウスを借りているが、同JAによると、新規就農や耕作面積拡大のネックになるのは農地の確保だという。思うような土地が見つからず断念する人もおり、伊藤理人(みちと)参事は「借り手と貸し手のマッチングを担う(県指定の)農地中間管理機構の役割に期待したい」とし、県の調整力と支援の重要性を指摘した。

記事・写真などの無断転載を禁じます
[PR]
おすすめニュース

県内ニュース最新一覧

[PR]