「チームのつくり方として1―0で勝つ考えを持っていない」。そんな石丸清隆監督の指揮の下、複数人が絡むパスワークを武器に攻撃を組み立て、総シュート数はリーグ2位だった。ただ、総得点となると、強固な守備やセットプレーなどを持ち味とした昨季と同じ59得点。重要局面で決定力を欠いたと言わざるを得ない。
序盤戦で大きくつまずき、徐々に攻撃的チームの形となった今シーズン。個の能力だけに頼らない連係による突破で、ゴール前に進入する回数を増やした。Jリーグのチーム別集計によると、全42試合のシュート数は計471本で、トップの水戸とは1本差。同17位だった昨季の計362本を大きく上回り、1試合当たりの平均は11.2本。数字上でも得点機を増やしたことが表れている。
一方、敗戦や無得点で引き分けた要因は、ゴール前のプレーで精度を欠いたことが多かった。巻き返しの兆しが見えてきた9月の試合が特にそうだった。第16節山口、第17節松本、第18節福岡と、相手の自陣に引いた粘り強い守りに苦戦。指揮官は「ゼロが続いていては勝てない」と嘆き、結果的に未勝利が6試合続いた。
石丸監督はチーム内で共有する「ゴール期待値」という指標に触れ、「ゴール前に行く回数は多いが、得点数は少ない。その差が激しい。(優勝でJ1に昇格した)徳島などは二つが比例している」と指摘。FWビニシウス・アラウージョが最多14得点とけん引した攻撃陣だが、崩しの形にこだわり過ぎた時期もあった。「グループとしての判断の共有がまだまだ足りない。ゴールを意識したポジション取りが必要だ」と石丸監督。瞬時の判断と正確なプレーが求められる最前線の局面だが、常にベストを選択できていれば、得点数の上積みは可能だったはずだ。
また、逆転勝利が1試合にとどまったことにも課題が残る。練習試合がなく、試合勘の調整が難しいシーズンだったが、若手、ベテランともに途中出場から流れを変えられるような選手がいなかった。主力はほぼ固定され、今季特例だった五つの交代枠を存分には生かし切れなかった。僅差の戦いが続く群雄割拠のJ2リーグ。来季の昇格に向けたしのぎ合いは既に始まっている。
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