3億8200万円で大沼落札 山形市公社、一帯の再開発視野

2020/12/4 07:29
山形市都市振興公社が競売で落札した大沼の旧山形本店=山形市七日町1丁目

 今年1月に破産した百貨店「大沼」(山形市)を巡る競売が3日、山形地裁で開札され、山形市都市振興公社が同市七日町1丁目の旧山形本店の土地・建物を落札した。落札額は3億8200万円。佐藤孝弘市長は記者会見で当面は現状のまま商業施設などとしての利用を模索するとした上で、将来的に隣接地にある市立病院済生館の改築に合わせた一帯の再開発を視野に入れていることを明らかにした。

 公社の阿部謙一理事長と共に市役所で記者会見に臨んだ佐藤市長は創業家から投資ファンドに経営権が移って以降、大沼を巡り、混乱が続いてきたと指摘。「民間事業者同士の取引による(大沼の)再生が望ましいと思っていたが、公共的な団体が取得することで、いったん腰を据えて検討することが現時点での最善策と考えた」と述べ、外郭団体の公社として入札に参加した理由を説明した。

 当面の用途として商業施設を想定しているとした一方、「具体的に何をする、どこと組むということは決まっていない。いろいろな提案があれば、積極的に聞いていきたい」とし、民間事業者と連携する考えを示した。百貨店の復活については「県内から1軒もなくなったことを悲しむ県民、市民が多い。しかし経営主体が現れるかどうか。全てこれから」と述べ、可能性は探りたいとした。

 市立病院済生館は1992年度に建設され、2030年度に法定の耐用年数を迎える。中心市街地での整備を前提に、21年度中に基本的な方向性を示すことになっている。

 競売入札には、現所有者の山形市の実業家和田有弘(なおひろ)氏(83)関連の2社を含む計4社が参加した。公社の次に高い入札額だったのは和田氏が経営するエム・エル・シー(同市)の3億6033万3千円だった。

 競売は11月24日に始まり、12月1日午後5時に締め切られた。売却基準価額は2億3346万円。買受可能価額(入札が成り立つ最低価格)は1億8676万8千円だった。

 同時に行われた旧ギフトショップ新庄店(新庄市)はエム・エル・シーが1601万1千円で落札した。いずれも売却決定期日は18日で、不服申し立てがなければ、26日に落札者が確定する。

エリア価値向上へ投資

 百貨店「大沼」を巡る競売への山形市都市振興公社の参加からは、山形市がこの場所をいかに重要と考えているか、覚悟の大きさを見て取ることができる。

 市は2018年度に策定した中長期ビジョン「市中心市街地グランドデザイン」で一帯を「商業強化・居住推進ゾーン」に位置付けている。しかし、中心的役割を期待した大沼が破産。競売では近隣で相次ぐマンション建設など他用途を想定する事業者が入札する可能性もあった。その中で、周辺への波及効果を持たせるには商業地として利活用され続ける必要があるとし、事実上、自ら所有者となる決断に至った。

 佐藤孝弘市長は県民会館跡地への新市民会館建設など、中心市街地の活性化に強い意欲を示す。県都を象徴する老舗百貨店だった旧山形本店は、そうした構想の中でも核となる場所といえる。佐藤市長は取得した土地と、市立病院済生館の改築の一体開発も視野に入れていると明らかにした。県都の中心商店街の将来に向け、この一手は大きな分岐点となりそうだ。

 中心商店街の衰退は全国的な課題だ。行政による土地・建物の取得は財政的な負担を増すリスクもある。佐藤市長は波及効果を生み、エリア全体の価値を向上させようと、いわば将来に向けて投資をした。同時に結果に対する大きな責任も負った。

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